ファビオ・ルイージ指揮 ロイヤル・コンセルトヘボウ管 日本公演

響きわたるコンセルトヘボウ・サウンド、ファビオ・ルイージが生み出す唯一無二のオーケストラ音楽

フォビオ・ルイージ&ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の今ツアー最初の公演(3日、ミューザ川崎シンフォニーホール)を聴く。


前半は12型でビゼーの交響曲第1番。第1楽章冒頭から弦楽器を主体とした柔らかな響きに耳を奪われる。第2楽章はまず甘美なオーボエ・ソロが絶品。その後も息長く歌われるしなやかな旋律線に酔わされる。以下の楽章を含めて、全体に“爽やかにしてコクのある”好演。単調になりがちな曲だが、ルイージはテンポや表情をさりげなく変えながら、優美さと堅牢さが共存した見通しの良い音楽を生み出した。

指揮者のファビオ・ルイージ(C)N. Ikegami
指揮者のファビオ・ルイージ(C)N. Ikegami

後半は16型でドヴォルザークの交響曲「新世界より」。やはり冒頭からふくよかな音と音楽が続く。しかも時には、フルートのソロ部分でスッとテンポを落とし、バックの色調も変えるといった芸の細かさをみせる。第2楽章は表情豊か。中でもイングリッシュ・ホルンの内省的な歌とバックの細かなニュアンスに感心させられる。第3、4楽章はしなやかさとダイナミズムが絶妙な均衡を保った快演。そして「エフゲニー・オネーギン」の「ポロネーズ」のアンコールで豊麗な終結を迎えた。

 

重層的ながらも柔らかくまろやかな弦楽器と、そこに溶け込みつつ要所で瑞々しさを発揮する管楽器……このヨーロピアンなコンセルトヘボウ・サウンドに触れたのは、ヤンソンス時代以来ではなかったか。ルイージの自然かつ巧みな構築と歌い回しに、会場の良き音響も相まって、唯一無二のオーケストラ音楽を満喫したとの思いしきりだ。
(柴田克彦)

細部まで構築されたサウンドで聴衆を魅了するロイヤル・コンセルトヘボウ管(C)N. Ikegami
細部まで構築されたサウンドで聴衆を魅了するロイヤル・コンセルトヘボウ管(C)N. Ikegami

指揮:ファビオ・ルイージ

公演データ

ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団日本公演

11月3日(金・祝)17:00 ミューザ川崎シンフォニーホール
4日(土)14:00 愛知県芸術劇場 コンサートホール
5日(日)15:00 京都コンサートホール
7日(火)19:00サントリーホール
9日(木)19:00文京シビックホール

・Aプログラム(4日、5日、7日)
ウェーバー
オペラ「オベロン」序曲
リスト
ピアノ協奏曲第2番 イ長調
チャイコフスキー
交響曲第5番 ホ短調 op.64

・Bプログラム(3日、9日)
ビゼー:交響曲第1番
ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」

※3日のアンコール
チャイコフスキー:歌劇「エフゲニー・オネーギン」より ポロネーズ

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柴田克彦

しばた・かつひこ

音楽マネジメント勤務を経て、フリーの音楽ライター、評論家、編集者となる。「ぶらあぼ」「ぴあクラシック」「音楽の友」「モーストリー・クラシック」等の雑誌、「毎日新聞クラシックナビ」等のWeb媒体、公演プログラム、CDブックレットへの寄稿、プログラムや冊子の編集、講演や講座など、クラシック音楽をフィールドに幅広く活動。アーティストへのインタビューも多数行っている。著書に「山本直純と小澤征爾」(朝日新書)。

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