「広上淳一&日本フィル オペラの旅」が2025年始動〜第1作はヴェルディ「仮面舞踏会」

日本フィルハーモニー交響楽団(JPO=平井俊邦理事長)は24日、「フレンド・オブ・JPO(芸術顧問)」の肩書を持つ指揮者の広上淳一、演出家の高島勲とともにオペラをサントリーホールにおいてセミステージ形式で上演する「オペラの旅」シリーズの制作発表記者会見を東京・池袋の東京音楽大学で行った。

記者会見に臨んだ(左から)指揮者の広上淳一、アメーリア役の中村恵里、リッカルド役の宮里直樹、演出を担当する高島勲 ©池田卓夫
記者会見に臨んだ(左から)指揮者の広上淳一、アメーリア役の中村恵里、リッカルド役の宮里直樹、演出を担当する高島勲 ©池田卓夫

第1回は広上のオペラ指揮デビュー(1989年、シドニー歌劇場)を飾ったヴェルディ「仮面舞踏会」で2025年4月26、27日の2公演。主役リッカルドに宮里直樹(テノール)、悲劇のヒロインのアメーリアに中村恵里(ソプラノ)ら強力な日本人キャストを組む。高島のほか振付に広崎うらん、衣装に桜井久美、照明に岩品武顕、舞台監督に幸泉浩司が加わる。高島は「オリジナルの歴史的デザインよりはいく分モダンな衣装、合唱も交えた身体表現を伴う」と基本ラインを示し、かなり本格的な舞台となりそうだ。

平井理事長は「2026年の楽団創立70周年をにらみ、広上さんのオペラへの情熱、教育者として若手を支援する姿勢を取り込んだ新たな挑戦」と、シリーズの背景を説明。広上は1991〜2000年に日本フィル正指揮者を務めた。「1982年に民音の指揮者コンクール(現東京国際指揮者コンクール)の本選で初めて指揮した時点から数えれば、40年以上のお付き合い。これまで36シーズン切れ目なく定期に呼んでくださった唯一のオケです。とりわけ昨年、レオンカヴァッロの「道化師」を定期で指揮した際、本来はシンフォニー・オーケストラの日本フィルがオペラで放つ息吹の強さ、歌手たちに絡んでいく力に目を見張り〝日本を代表する歌手たちと素晴らしいオペラの絵巻をつくり、サントリーホールのお客様に気さくに楽しんでいただこう〟との発想が生まれました」と語った。若い世代の教育も視野に入れ、合唱には自身が教授を務める東京音楽大学の学生たちを起用する。

長年にわたって深い関係を続けてきた日本フィルとのオペラ上演への思いを語る広上淳一©池田卓夫
長年にわたって深い関係を続けてきた日本フィルとのオペラ上演への思いを語る広上淳一©池田卓夫

中村は「サントリーホールの音響は世界の演奏家や音楽ファンの間でもすでに有名。やがては対訳の字幕に英語を加え、インバウンドのお客様も増やしていけたら素晴らしいですね」と、面白いアイデアを提案。両親がオーケストラ楽員で自身もヴァイオリンを学んだ宮里は「オーケストラがピットで弾く舞台上演と違い、お客様は今どの楽器が音を出しているかを目で確かめられます。歌手は音量で負けないかと心配もするのですが、同じ舞台上の演奏にしかない一体感は魅力的です」と、ホール形式の長所を指摘した。

(池田卓夫)
音楽ジャーナリスト

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