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むねつぐ通信

くらしの中にクラシック

くらしの中にクラシック
~音楽と共に生きる経営者の物語 最終回

カレーハウスCoCo壱番屋の創業者で現在は名古屋にある宗次ホールの代表を務める宗次德二さんがクラシック音楽と歩んできた軌跡をたどる連載の最終回。8月下旬から開催される第3回ザハール・ブロンヴァイオリン・マスタークラスについて伺った。
名伯楽として世界を飛び回るブロン氏のレッスンを日本で受けられるのは、ここ宗次ホールだけ。マスタークラスを受講してみたいという方はもちろん、一般の方に向けてもその魅力をお話いただいた。

情熱いっぱいの8日間、宗次ホールの熱い夏

今年も、夏の終わり8月26日から9月2日までの8日間、宗次ホールで第3回ザハール・ブロンヴァイオリン・マスタークラスが開催される。
ザハール・ブロン氏は、これまでに樫本大進、庄司紗矢香、川久保賜紀、神尾真由子、服部百音など世界で活躍するトップ・アーティストを世に送り出してきた指導者だ。

第2回 ザハール・ブロン ヴァイオリン・マスタークラス in 宗次ホール 2023にて
第2回 ザハール・ブロン ヴァイオリン・マスタークラス in 宗次ホール 2023にて

「過去に横浜、茨城などでブロン先生のレッスンが行われてきましたが、茨城の笠間市で開催されていたアカデミーが終了したのを最後に、1~2年途絶えてしまいました。このままだと日本で先生のレッスンを受けられなくなってしまう。それはあまりにも大きな損失だということで、宗次ホールが引き継ぐことになりました。
受講生のレベルは非常に高く、第8回仙台国際音楽コンクールのヴァイオリン部門で優勝し、いまや多数のリサイタルに出演する若手ヴァイオリニストの中野りなさんも毎回受講されています。

 

マスタークラスの応募資格は8歳からですが、実際に10歳前後の方からの応募が少なくありません。先日宗次ホールでリサイタルを開催した名古屋市出身の近藤瑠伊さんは9歳の時に初めてマスタークラスを受講しました。他にも同年代の受講生が何人かいましたが、すでに高い技量を持っている方ばかりです。飲み込みが早く、通訳を介してブロン先生の指導を聞いた直後に演奏が変わるのを実感します。

ブロン先生の指導を受けて、受講生たちの演奏がみるみるうちに進化していく
ブロン先生の指導を受けて、受講生たちの演奏がみるみるうちに進化していく

マスタークラスの期間中は、1レッスン45分を1日8レッスン組む過密スケジュールですが、ブロン先生から疲れはいっさい感じられません。きっと先生にとっても教えることが生きがいであり、元気の素なのでしょうね。レッスンの時間外でも、ホールにいる間はできる限り受講生の質問に答えるなど、情熱いっぱいで受講生と向き合います。
最終日にはマスタークラスの集大成として受講生コンサートがありますが、そこで披露される演奏は、最初の頃とは明らかに違います。他の受講生たちの存在も刺激になるのでしょうね。全日程を終える頃には、みな充実感に満ちた良い表情をされていますよ」

 

マスタークラスの前日には、ブロン氏と服部百音さんが共演するオープニングコンサートが開催される。チケットは即日完売する人気ぶりだ。

 

「8月25日のオープニングコンサートでは、モーツァルトの『コンチェルタンテ』やショスタコーヴィチ『2台のヴァイオリンのための5つの小品』をデュオで演奏します。演奏の合間には、お二人のトークも聞けるかもしれません。ブロン先生と服部百音さんの師弟関係は長く、百音さんがブロン先生に言いたいことをストレートに言ってしまえるお二人の関係性が見ていて微笑ましいです。
共演するピアニストのイリーナ・ヴィノグラードワさんは、マスタークラスでも伴奏者として参加します。長年の経験からブロン先生の意図を的確にくみ取り、スムーズにレッスンを進められるよう常にサポートしてくれる、頼もしいパートナーです」

マスタークラスを終えて、ブロン先生と握手を交わす宗次さん

一般の方の聴講も歓迎! 若い才能を発掘するチャンス

「名古屋一円から、毎日のようにレッスンを聴講しに来られる音楽愛好家もいらっしゃいますよ。きっと優秀な方が集まるこのマスタークラスで有望な演奏者を脳裏に焼きつけて、この先も応援していこうと考えているのだと思います。将来的に〝あの時発掘した方がものすごいアーティストになった!〟と言えたらうれしいですよね。未来の演奏家がブロン先生の指導のもとで成長していく過程をぜひ見届けてください」

(完)

エピローグ~人生の達人が教えてくれたこと

宗次さんの金言を集めた日めくりカレンダー「人生の達人」には、こんな言葉が書かれている。

〝やさしい気持ちが人生を成功に導く〟

宗次さん曰く、〝充実した人生を実感できるのは、なんといっても人に手を差し伸べる生き方〟なのだそうだ。その言葉通り、これまでたくさんの音楽家が宗次さんの支援によって活躍の場を広げてきた。取材中、時おり「ホールの経営は飲食店よりも難しい」と口にされたが、その表情はどこまでもやさしかった。

終演後、ホールの出口でお客様のお見送りをする宗次さん
終演後、ホールの出口でお客様のお見送りをする宗次さん

宗次さんが15歳の時に初めてメンデルスゾーンのヴァイオリン・コンツェルトと出合ったことから始まった奇跡の物語は現在も進行中。いまや日本で有数のクラシック音楽の発信地となった宗次ホールは、これからもたくさんの人たちにクラシック音楽と出合う機会を提供し、音楽で満たされる人たちを増やし続けていくだろう。そして、宗次ホールの理念である〝くらしの中にクラシック〟が当たり前になる未来は、やさしさで溢(あふ)れているにちがいない。

(文・野崎裕美)

1階ロビーに設置されているたくさんの募金箱
1階ロビーに設置されているたくさんの募金箱

第3回 ザハール・ブロン ヴァイオリン・マスタークラス in 宗次ホール

日程:2024年8月26日(月)~9月2日(月) 8日間
会場:宗次ホール

宗次ホール
住所:愛知県名古屋市中区栄4丁目5-14
公式webサイト:https://munetsuguhall.com
Instagram: @munetsugu_hall
X: @munetsuguhall
facebook: munetsuguhall
宗次ホール Youtube チャンネル

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