くらしの中にクラシック
~音楽と共に生きる経営者の物語 第3回
カレーハウスCoCo壱番屋の創業者で現在は名古屋にある宗次ホールの代表を務める宗次德二さんがクラシック音楽と歩んできた軌跡をたどる連載の第3回。宗次さんが見てきた音楽家の姿や、これからクラシック音楽をもっと好きになりたいという人たちへのアドバイスを伺った。
素敵な一日のはじまり
「百利あって一害なし」と宗次さんが断言する早起きの習慣。宗次さんは喫茶店やココイチの経営者時代から朝3時台には起床する〝超〟早起きを続けてきた。
朝早くから活動すると、思わぬ出来事で素敵な一日のスタートを切ることがある。この日も早朝6時から街の清掃作業をしていると、宗次さんの電話が鳴った。
「確か朝の6時40分か50分くらいでした。ヴァイオリンの成田達輝さんから〝今から伺っていいですか?〟と連絡があり、私もすでに外に出ていたので、勿論いいですよと言って会うことができました。成田さんはCDの収録のために3日間長久手市に滞在されていたようで、これから新幹線に乗って羽田から北海道へ向かうと言っていました。きっと疲れていただろうに、わざわざ会いに来てくれたことに感激して〝よく来たね〟と言いました」
成田さんは、現在、宗次さんが代表を務めるNPO法人イエロー・エンジェルの宗次コレクションより貸与されたアントニオ・ストラディヴァリTartini 1711 年製を使用、国内外で幅広い演奏活動をしている。
忙しい音楽家が限られた時間の中でも会いに行くのは、クラシック音楽を広めたいという想いで始めた宗次さんの活動の数々が、彼らのエネルギーの源になっている何よりの証拠だろう。
クラシック音楽愛好家への第一歩は、誰かの〝ファン〟になること
ステージでひと際強いオーラを放つ音楽家も、宗次さんいわく、ステージを離れれば普通の誠実で気さくな方々が多いそうだ。
「たとえば神尾真由子さん(宗次コレクションよりストラディヴァリウス1731年製作「Rubinoff」を貸与)もそのひとりです。普段は普通に接していただきますが、ステージでは期待を裏切らない、気迫の演奏を披露してくれます。
著名な演奏家が皆近づき難いわけではありません。音楽家は、ひとりでも多くの方にクラシック音楽に関心を寄せてほしい。自分の演奏を聴いて欲しいと願っています。何もしなくてもたくさんの人がファンになってくれる世界ではないので、ファンづくりに関しては積極的です。20代から40代の若い方で、すでにCDを何枚も出されているような方でも、演奏会後に気さくにサイン会を開いてくれることが多く、その際には、お客様が演奏者に直接感想を伝えることができます。
クラシック音楽をもっと好きになりたい!という方は、誰かのファンになってコンサートに通うのもひとつの方法かもしれません。この人の演奏をもっと聴きたい、今度は知人にも教えたい。この人が弾くベートーヴェンやシューベルトを聴くために別のコンサートにも行ってみよう、と思えるようになると、自ずとクラシック音楽の世界が広がっていくでしょうね。そして行く先々で〝この間は、この会場で聴きました!〟と演奏者に伝えればきっと話が盛り上がっていくはずです」
お客様は十人十色。コンサートで未知の音楽との出合いを楽しんでほしい
「平日の昼に開催している1,000円のランチタイムコンサートでは、クラシックに慣れていない方にも楽しんでいただける有名な曲を演奏することになっています。一方、ある程度のお金を払って聴いていただくリサイタルでは、演奏者が演奏したい曲を選曲します。つい先日行われたソプラノ・リサイタルは、歌曲が中心のプログラムでした。私個人的にはオペラ・アリアも歌って欲しかったのですが、お客様の多くが彼女のファンだったこともあり、ものすごく盛り上がっていました。勿論、私も歌唱力に圧倒されました。
自分の聴きたい曲だけを選別していると、結局いつも同じようなものを聴いて世界が広がりません。もちろん良い曲は何度聴いても良いですし、演奏者が変われば新たな魅力を発見できます。同じ演奏者でも日が変わればまた雰囲気が変わるので、それも面白いと思います。
ただ、知らない曲には興味がないと決めつけてしまうのはもったいない。たとえ今日のプログラムの曲を全部知らなかったとしても、リサイタルで初めて聴いた曲に感動して〝CDを買って聴いてみよう〟と思うかもしれません。どの曲が気に入るかはお客様次第です。ぜひ会場に足を運んで、長く伝承された価値ある名曲と出合う体験をしてください」
文・野崎裕美
(第4回へ続く)
コンサートの思い出に、
音楽ホールならではのお土産はいかが?
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宗次ホール
住所:愛知県名古屋市中区栄4丁目5-14
公式webサイト:https://munetsuguhall.com
Instagram: @munetsugu_hall
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