年初に味わう大家の名演

2025年後半に話題を呼んだ指揮者の新譜がそろった。俊英から長老まで現代を代表する大家たちの名演は、新年にこそ楽しみたい豪華なラインナップだ。

<BEST1>

ブラームス 悲劇的序曲、交響曲第1番

キリル・ペトレンコ(指揮)/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

ブラームス 悲劇的序曲、交響曲第1番
BPOレコーディングス BPHR-250561(輸入盤)

<BEST2>

マーラー 交響曲第8番「千人の交響曲」

クラウス・マケラ(指揮)/ヘイリー・クラーク(ソプラノ)ほか/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団

マーラー 交響曲第8番「千人の交響曲」
デッカ(ユニバーサルミュージック) UCCD-45040

<BEST3>

ブルックナー 交響曲第9番

ヘルベルト・ブロムシュテット(指揮)/チューリヒ・トーンハレ管弦楽団

ブルックナー 交響曲第9番
ソニーミュージック SICC-30931

昨年11月はウィーン・フィル、ロイヤル・コンセルトヘボウ管(RCO)、ベルリン・フィルと3大名門が、半月のあいだに集中して訪日する、ひさびさに大変な事態となった。オーケストラの演奏機能だけを取れば、ベルリン・フィルが一頭地を抜いていたとの評判で、当サイト「アンコール」欄でも速報があった。
メイン・プログラムの一つがブラームスの交響曲第1番。今季の幕開け(9月17~19日)にベルリンの本拠地で取り上げた際のライヴ録音を、楽団の自主レーベルが大急ぎでCD化し、日本での会場売りに間に合わせた。
水も漏らさぬ緊密でマッシブな合奏と、プロイセンの楽団らしい豪壮でダークな音色が、ブラームスのドイツ的な性格を強める。初演当時の譜面や演奏様式を考慮したとみられる弦楽器のポルタメントなど、K・ペトレンコらしい研究の跡もある。少々オケの勢いが余るのは好悪を分かつとして、一聴の価値はある。「悲劇的序曲」は24年2月の収録。

俊英クラウス・マケラの活躍ぶりも、当サイトは広くカバーしてきた。RCOとの来日で交響曲第5番を聴かせたマーラーの新譜は、25年5月にアムステルダムの本拠地でライヴ収録した同第8番「千人の交響曲」。ここでもマケラは複雑に絡み合う響きの透明度を確保して、見通し良く爽やかな気風に満ちる快演にまとめた。しなやかな弾力感と温かみをたたえる楽団伝統の響きが随所で妙味を発揮し、若い次期首席指揮者を盛り立てている。

いまや世界最長老の現役指揮者と言っていいブロムシュテットは、98歳にしてNHK交響楽団の定期演奏会に登場し、無事に全日程を終えた。それに合わせて、チューリヒ・トーンハレ管と2014年12月に共演したブルックナー交響曲第9番のライヴ盤が登場した。とうとうと流れるなかにも、演奏のすみずみまで強じんな意志が浸透し、名匠ならではの孤高の境地が比類ない。

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深瀬 満

ふかせ・みちる

音楽ジャーナリスト。早大卒。一般紙の音楽担当記者を経て、広く書き手として活動。音楽界やアーティストの動向を追いかける。専門誌やウェブ・メディア、CDのライナーノート等に寄稿。ディスク評やオーディオ評論も手がける。

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