新国立劇場がオペラパレスにおける公演をライブ&オンデマンド配信する。演目はプッチーニの「ラ・ボエーム」(大野和士指揮、粟國淳演出)の再演。ライブ配信は7月2日(日)午後2時から、オンデマンドでは7月16日から8月12日までの間、配信される。全国のオペラ・ファンが、開場から四半世紀が経過した同劇場の充実のステージを地元に居ながらにして楽しめるようになる。なお、公演自体は6月28日から7月8日の間、5回行われる。公演の聴きどころ、見どころも併せて紹介しよう。(宮嶋 極)
プッチーニの「ラ・ボエーム」は、19世紀のパリを舞台に成功を夢見る若き芸術家たちの青春の日々を描いたドラマ。詩人のロドルフォとお針子ミミの悲しい結末を迎える純愛を縦軸に、2人を取り巻く友人たちの貧しくても活気にあふれた人間模様を横軸にした青春群像劇。4幕約100分の中に「冷たい手を」(第1幕)、「私の名前はミミ」(同)、「ああ麗しい乙女よ」(同)、「ムゼッタのワルツ〝私が街を歩けば〟」(第2幕)、「さようなら、甘い目覚めよ」(第3幕)、「みんな行ってしまったのね」(第4幕)などプッチーニならではの甘く、そして時には悲しい名旋律の数々が全曲にわたって散りばめられている。
今回上演される粟國淳演出による舞台は2003年にプレミエされて以来、何度も再演されている新国立劇場を代表するプロダクションのひとつである。同劇場の大きな舞台を生かしたリアリティーあふれる舞台装置も見どころのひとつ。指揮はオペラ芸術監督の大野和士が自ら務め、オケ・ピットには東京フィルハーモニー交響楽団が入る。
イタリア・オペラといえば、声の〝饗宴〟も楽しみのひとつ。ミミ役はイタリア出身で同国の主要なオペラ劇場で活躍するアレッサンドラ・マリアネッリが演じる。その恋人ロドルフォは米国出身でウィーン国立歌劇場、ニューヨーク・メトロポリタン歌劇場など世界のひのき舞台で頭角を現しつつある実力派テノール、スティーヴン・コステロが歌う。さらにイタリアのヴァレンティーナ・マストランジェロ(ムゼッタ)、日本の須藤慎吾(マルチェッロ)ら内外の実力派歌手たちが脇を固める。
ライブ配信は3,300円(税込)、オンデマンドが1,980円(税込)とリーズナブルなチケット料金で楽しむことができる。(詳細は劇場ホームページ オペラ『ラ・ボエーム』ライブ/オンデマンド配信(有料)のご案内 | 新国立劇場 まで)
また、実際の公演も若干の残席があるそうで(6月21日現在)、歌手たちの美声と迫力あるオケのサウンドを生で堪能することができる。オペラのビギナーでも十分に楽しめる作品と舞台作りがなされた上演であることから、これまでオペラに馴染みのない方にもその魅力が体験できるまたとない機会といえよう。
公演データ
6月28日(水)19:00、30日(金)14:00
7月2日(日)14:00、5日(金)14:00、8日(土)14:00
新国立劇場オペラパレス
ライブ配信: 7月2日(日)14:00
オンデマンド配信: 7月16日(日)10:00~8月12日(土)22:00
指揮:大野 和士
演出:粟國 淳
美術:パスクアーレ・グロッシ
衣裳:アレッサンドロ・チャンマルーギ
照明:笠原 俊幸
舞台監督:髙橋 尚史
ミミ:アレッサンドラ・マリアネッリ
ロドルフォ:スティーヴン・コステロ
マルチェッロ:須藤 慎吾
ムゼッタ:ヴァレンティーナ・マストランジェロ
ショナール:駒田 敏章
コッリーネ:フランチェスコ・レオーネ
べノア:鹿野 由之
アルチンドロ:晴 雅彦
パルピニョール:寺田 宗永
合唱指揮:三澤 洋史
合唱:新国立劇場合唱団、TOKYO FM少年合唱団
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
みやじま・きわみ
放送番組・映像制作会社である毎日映画社に勤務する傍ら音楽ジャーナリストとしても活動。オーケストラ、ドイツ・オペラの分野を重点に取材を展開。中でもワーグナー作品上演の総本山といわれるドイツ・バイロイト音楽祭には2000年代以降、ほぼ毎年訪れるなどして公演のみならずバックステージの情報収集にも力を入れている。