想像力巧みに〝四季〟創出 木嶋真優「ヴィヴァルディ×ピアソラ シーズンズ」

木嶋真優
木嶋真優

ヴァイオリニストの木嶋真優が22年1月18日、東京オペラシティ コンサートホールで弦楽アンサンブルとともにヴィヴァルディとピアソラの2つの「四季」をプログラムにしたコンサートを開催する。木嶋本人のインタビューを交えて、この聴きどころを紹介する。(宮嶋 極)

 

 近年は民放のバラエティー番組に数多く出演するなどしてマルチな才能を発揮し、その人気に一層の拍車がかかっている木嶋だが〝本業〟であるクラシック音楽にかける熱意は並大抵のものではない。その思いが結実したのが今回のコンサートである。

 

 「コロナ禍に見舞われたこの2年間、自粛生活の期間が長くなって人と会えなくなり、季節の移り変わりを感じることも少なくなりました。多くの人々が春の桜、夏の海、秋の紅葉、冬景色といったこれまでは当たり前だった季節の変化を見ることができなくなったわけです。そんな今だからこそ、自分の頭の中で駆け巡る季節の移り変わりを音楽で表現したくて昨年12月にヴィヴァルディの〝四季〟を中心に〝seasons(シーズンズ)〟と題したCDを録音、リリースしました。本来はこの発売記念の演奏会として企画していたのですが、厳しい感染状況が続き1年越しの実現となったのが今回のコンサートです。ヴィヴァルディとピアソラの〝四季〟を合わせて8つの異なる季節感を体感していただきたいと思います」と木嶋は熱く語る。

 

 彼女を支える弦楽アンサンブルは東京シティ・フィルの客員コンサートマスター、京都フィルハーモニー室内合奏団のソロ・コンマスなどを歴任した松野弘明を中心にN響の首席・次席奏者で編成された腕利きプレイヤーの室内合奏団である。

 

 「〝シーズンズ〟のCDを制作するにあたりリハーサルも含めて3、4日間皆さんとご一緒したのですが、これまでの人生の中で一番と言っても過言ではないほどの至福の時でした。目を閉じて彼らの織りなす音の渦に身を委ね、そこに自分の音を重ねていく時の幸せをかみしめながら演奏していました。今回のコンサートではそうした素晴らしい瞬間を聴衆の皆さんと共有できたらと思います。少人数のアンサンブルならではの濃密な音楽の対話をお楽しみいただけるはずです」

 

 コンサートでは18世紀にイタリアで作曲された「四季」に続いて20世紀に活躍したアルゼンチン出身の作曲家ピアソラの「ブエノスアイレスの四季」が演奏される。

 

 「ヴィヴァルディとピアソラの〝四季〟の組み合わせはよくあるのですが、今回の特徴はピアソラをヴィヴァルディよりもさらに少ない人数で演奏することです。ピアソラの時代は2人とか3人とかごく少数のプレイヤーが濃密に絡み合って、独自の世界観を築き上げていくスタイルでした。私はそれがピアソラの音楽の醍醐味(だいごみ)だと考えていて、ぜひ、その世界を再現してみたいのです。今回、山下康介さんという素晴らしい編曲をなさる方にお願いしたのですが、山下さんが編曲してくださったものにもう一段階、私自身のアイデアも盛り込んで、一緒に相談しながら新しいバージョンを生み出すように作っていき、コンサートでそれを初演の形にしたいのです。〝シーズンズ〟のCDでも即興的にカデンツァを入れたりしていますが、これからは自分なりの創造力を働かせた表現をしていくことを目指している中でピアソラもオリジナル通りではなく、編曲に加えて自分でもアレンジも加えて、作り上げていきたいと思っています」

 

 ちなみに「ブエノスアイレスの四季」は〝夏〟から演奏されることが多いが、どのような順番で弾いていくかも、これから創造力を働かせながら決めていくのだという。木嶋の描き出す「8つの季節」に彼女なりのオリジナリティーがどのように盛り込まれていくのか、楽しみである。

 

 

プロフィル

木嶋 真優 (きしま まゆ)

国内外で活躍するヴァイオリニスト。近年はバラエティー番組などでタレントしても活躍し人気を博す。2016年第1回上海アイザック・スターン国際ヴァイオリン・コンクール優勝。00年第8回ヴィエニャフスキ国際ヴァイオリン・コンクール・ジュニア部門で日本人として最年少で最高位受賞。11年ケルン国際音楽コンクールのヴァイオリン部門で優勝、あわせて優れた音楽的解釈に対し贈られるDavid Garrett賞も受賞した。02年度文化庁海外派遣研修員。これまでに江藤俊哉、ドロシー・ディレイ、川崎雅夫、小栗まち絵、工藤千博、ザハール・ブロンらに師事、12年春にはケルン音楽大学を首席で卒業、15年秋には同大学院を満場一致の首席で修了し、ドイツの国家演奏家資格を取得。20年12月にはキングレコードより新譜CD「seasons」をリリースした。

公演データ

【木嶋真優 ウィズ 弦楽アンサンブル ヴィヴァルディ×ピアソラ シーズンズ】

2022年1月18日(火)19:00 東京オペラシティ コンサートホール

ヴァイオリン:木嶋真優
弦楽アンサンブル:松野弘明(ヴァイオリン・コンサートマスター)、森田昌弘、白井 篤、三又治彦(以上、ヴァイオリン)、佐々木 亮、中井 翔太郎(以上、ヴィオラ)、銅銀久弥(チェロ)、石川 滋(コントラバス)、山田武彦(チェンバロ)
ヴィヴァルディ:ヴァイオリン協奏曲集 ~和声と創意の試み「四季」
ピアソラ/山下康介編:「ブエノスアイレスの四季」

Picture of 宮嶋 極
宮嶋 極

みやじま・きわみ

放送番組・映像制作会社である毎日映画社に勤務する傍ら音楽ジャーナリストとしても活動。オーケストラ、ドイツ・オペラの分野を重点に取材を展開。中でもワーグナー作品上演の総本山といわれるドイツ・バイロイト音楽祭には2000年代以降、ほぼ毎年訪れるなどして公演のみならずバックステージの情報収集にも力を入れている。

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