春のギター・フェス「ザ・ギタリスト」& 山下愛陽ギター・リサイタル

若手の大器から世界的大御所まで名ギタリストたちが東京に集結し華麗な競演を繰り広げる。

今月、ギターの注目公演が相次いで開催される。ひとつは既に当コーナーでも紹介したブラジルの人気デュオ、アサド兄弟のコンサート(4月25日、日本製鉄紀尾井ホールほか)。その前日24日には「ザ・ギタリスト~スーパーギタリスト 夢の競演」が同じ紀尾井ホールで開催される。さらに28日には若きカリスマギタリストとして注目される山下愛陽(やましたかなひ)のリサイタルが東京・銀座のヤマハホールで予定されている。まさに春のギター・フェスティバルの様相を呈している。

名ギタリストの競演の大トリを務めるギター界のレジェンド、アサド兄弟 ©Isabelle_Françaix
名ギタリストの競演の大トリを務めるギター界のレジェンド、アサド兄弟 ©Isabelle_Françaix

なお、アサド兄弟のデュオ・コンサートの詳細について既にアップしている拙稿(ギターの人気デュオ アサド兄弟リサイタル | CLASSICNAVI)をご覧いただくとして、本稿では「ザ・ギタリスト~」と山下愛陽のリサイタルについてその魅力を紹介したい。

「ザ・ギタリスト~」は韓国の実力派ギタリスト、デニス・ソンホ、TRES(沖仁×大萩康司×小沼ようすけ)、山下愛陽が出演。そしてアサド兄弟が〝大トリ〟を務める。
先陣を切るデニス・ソンホは7歳でギターを始め、14歳でコンクール優勝に輝き、ベルギー・ブリュッセルとモンスの王立音楽院で学んだ。その後、アサド兄弟にも師事し、ニューヨーク・カーネギーホールやベルリンのフィルハーモニー(ベルリン・フィルの本拠)など世界の名門ホールの舞台を踏み、2018年のピョンチャン冬季五輪では開会式などの芸術監督も務めた。クラシックからポップスまでジャンルを超越した彼の演奏は世界のギター音楽ファンから高い支持を得ている。広いレパートリーの中から今回は何を聴かせてくれるのか、ファンの期待は高まる。

韓国の人気実力を兼ね備えたギタリスト、デニス・ソンホ
韓国の人気実力を兼ね備えたギタリスト、デニス・ソンホ

次に登場するのは日本のギター・トリオ、TRES。フラメンコ・ギターの沖仁、クラシック・ギターの大荻康司、ジャズの小沼ようすけの3人がジャンルを超えてトリオを結成。クラシックのアレンジからオリジナル曲まで彼らならではの高い技術力と独自の世界観で多くの聴衆を魅了してきた。トリオ結成以来、コンサートのチケットが何度も完売するほどの人気ぶりで、「ザ・ギタリスト~」でも内外の〝猛者〟を相手に幅広いレパートリーの中から唯一無二の演奏を聴かせてくれることだろう。

幅広いレパートリーで彼らならではの世界観で人気のTRES ©Kazumasa Harada
幅広いレパートリーで彼らならではの世界観で人気のTRES ©Kazumasa Harada

3番目に登場するのは28日にソロ・リサイタルも行う山下愛陽。1997年に長崎で生まれた山下は名ギタリストの山下和仁を父に、作曲家の藤家渓子を母に持つ音楽一家で育った。7歳から「山下和仁ファミリー・クインテット」の一員として、また、父・和仁とのデュオで国内外において演奏活動を開始。2015年に単独でドイツに拠点を移して多くの優秀な演奏家を輩出しているベルリン芸術大学のギター科に加えて声楽科でも学び、ミュンヘン国際音楽コンクールのセミ・ファイナリストやドイツ・ギター賞などコンクール上位や賞を多数獲得している。現在はソロに加えて室内楽などでも活躍するギター界の大器である。正統派の道を歩み、高度なテクニックと伸びやかな音楽性で高い注目を集めており、昨年行った初の日本ツアーでも高い評価を得ている。28日のリサイタルでは自らが編曲したJ・S・バッハの無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番からシャコンヌなど、王道のレパートリーを披露する。

ギター界の大器、山下愛陽、28日はリサイタルも行う ©Christoph Sauer
ギター界の大器、山下愛陽、28日はリサイタルも行う ©Christoph Sauer

大トリは前出の通り、ギター界のレジェンドであるアサド兄弟がその妙技を存分に聴かせる。ギター・ファンにはいずれも聴き逃すことのできない3公演となりそうだ。

(宮嶋 極)

公演データ

ザ・ギタリスト スーパーギタリスト 夢の競演

4月24日(木)18:30 日本製鉄 紀尾井ホール

出演者・プログラム
opening stage
デニス・ソンホ with Strings Quintet
2nd stage
TRES[沖仁×大萩康司×小沼ようすけ]
3rd stage
山下愛陽 ギターソロ
main stage
アサド兄弟[SÉRGIO & ODAIR ASSAD]

主催/企画・制作:エイベックス・クラシックス
制作協力:インタースペース

詳細はチケットスペース
https://www.ints.co.jp/guitarfes20254.html

 

山下 愛陽 ギター・リサイタル

4月28日(月)19:00 ヤマハホール

ギター:山下 愛陽

プログラム
ジョン・ダウランド:プレリュード P98、夢想 P73
ジュリオ・レゴンディ:夢の夜想曲Op.19
ベンジャミン・ブリテン:ノクターナルOp.70
フランク・マルタン:ギターのための4つの小品
「プレリュード/アリア/嘆き/ジーグのように」
マリオ・カステルヌオーヴォ=テデスコ:世紀をわたる変奏曲 Op.71
J・S・バッハ:無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番ニ短調 BWV1004より シャコンヌ(山下愛陽編曲)

詳細はチケットスペース
https://www.ints.co.jp/kanahi-y20254.html

Picture of 宮嶋 極
宮嶋 極

みやじま・きわみ

放送番組・映像制作会社である毎日映画社に勤務する傍ら音楽ジャーナリストとしても活動。オーケストラ、ドイツ・オペラの分野を重点に取材を展開。中でもワーグナー作品上演の総本山といわれるドイツ・バイロイト音楽祭には2000年代以降、ほぼ毎年訪れるなどして公演のみならずバックステージの情報収集にも力を入れている。

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