ヤクブ・フルシャ指揮 NHK交響楽団 第2059回 定期公演 Bプログラム

フルシャ3年ぶりN響 同郷シュパチェクとドヴォルザーク、ブラームス「セレナード第1番」で魅了

ドヴォルザーク「ヴァイオリン協奏曲」は、シュパチェク、フルシャともども〝お国もの〟。2人は2016年に都響とも同曲を共演しており、呼吸の合ったアンサンブルが随所に聴かれる。当時のシュパチェクは美音ながら線の細さを感じた記憶があるが、今回は格段の逞しさと生命力を備えた演奏へと変貌していた。

ヤクブ・フルシャが指揮台に立ち、同郷のヨゼフ・シュパチェクと共に呼吸の合ったドヴォルザーク「ヴァイオリン協奏曲」を披露した 写真提供:NHK交響楽団 
ヤクブ・フルシャが指揮台に立ち、同郷のヨゼフ・シュパチェクと共に呼吸の合ったドヴォルザーク「ヴァイオリン協奏曲」を披露した 写真提供:NHK交響楽団 

第1楽章では情熱的な主題から力強いソロで一気に惹き込む。副主題は美音でたっぷりと歌われ、民族色も自然ににじむ。フルシャの指揮もダイナミックかつ緻密で、内声を充実させながら独奏を的確に支えた。再現部、ホルン伴奏の上での短いカデンツァは野性味に富む。
フルートとオーボエの導入に続く第2楽章では、シュパチェクが郷愁に満ちた主題をおおらかに歌い、木管の美しい響きも格別であった。
終楽章では、フリアントを思わせるリズムのロンド主題を、鋭いアクセントと推進力で生き生きと展開。抒情的な中間エピソードを経て主題が回帰し、トゥッティとともに一気に閉じた。攻めの演奏に場内はブラヴォーで沸いた。

アンコールは郷古廉、村上淳一郎、藤森亮一との共演によるドヴォルザーク(A.リーム編)「ユーモレスク」第7番。郷愁に満ちた締めくくりであった。

ソリストのシュパチェクは、郷古廉、村上淳一郎、藤森亮一との共演でドヴォルザーク(A.リーム編)の「ユーモレスク」第7番を演奏した 写真提供:NHK交響楽団 
ソリストのシュパチェクは、郷古廉、村上淳一郎、藤森亮一との共演でドヴォルザーク(A.リーム編)の「ユーモレスク」第7番を演奏した 写真提供:NHK交響楽団 

ブラームスが20代で書いた「セレナード第1番」は、40代半ば以降の交響曲を予感させる名曲であるが、演奏機会は多くない。筆者も実演に接したのは今回が初めてである。フルシャの指揮は、堂々として輝かしい響きをN響から引き出し、作品の真価をあらためて印象づけた。

全6楽章から成るが、最初に書かれた第1、第3、終楽章は内容・構造の両面でとりわけ充実している。フルシャの手にかかると、これらは交響曲の各楽章と呼んでも過言ではないほど、スケールの大きな音楽として響いた。

ブラームスのセレナード 第1番 写真提供:NHK交響楽団 
ブラームスのセレナード 第1番 写真提供:NHK交響楽団 

第1楽章アレグロ・モルトでは、全合奏の力強い頂点の雄大な響きと展開部の精緻な筆致を的確に再現。第3楽章アダージョ・ノン・トロッポでは、低弦とファゴットによる主題の温かみ、ホルンの伸びやかな第2主題が印象的で、まさに交響曲の緩徐楽章を思わせる充実ぶりであった。
第5楽章スケルツォは、ベートーヴェン「交響曲第2番」を思わせる点もほほえましいが、フルシャとN響はきりりと引き締まった演奏を聴かせた。
第6楽章ロンドでは、力感に富む第1主題と抒情的な第2主題が内からあふれる生命力に満ち、コーダは「交響曲第1番」終楽章を思わせる堂々たる締めくくり。
一方、縮小編成による第4楽章はクラリネットとファゴットによる第1メヌエットのユーモア、ト短調の第2メヌエットの感傷が細やかに描かれ、セレナードの名にふさわしい魅力を放った。

多彩な表情を持つ本作の理想的な演奏を実現したフルシャとN響に、大きな拍手が贈られた。(長谷川京介)

終演後、フルシャとN響に盛大な拍手が贈られた 写真提供:NHK交響楽団 
終演後、フルシャとN響に盛大な拍手が贈られた 写真提供:NHK交響楽団 

公演データ

NHK交響楽団 第2059回 定期公演 Bプログラム

2月19日 (木)19:00 サントリーホール 大ホール

指揮:ヤクブ・フルシャ
ヴァイオリン:ヨゼフ・シュパチェク
管弦楽:NHK交響楽団
コンサートマスター:郷古 廉

プログラム
ドヴォルザーク:ヴァイオリン協奏曲 イ短調 Op.53
ブラームス:セレナード 第1番 ニ長調 Op.11

ソリスト・アンコール
ドヴォルザーク(A.リーム編):ユーモレスク第7番変ト長調 Op.101-7
(ヴァイオリン:ヨゼフ・シュパチェク、郷古 廉、ヴィオラ:村上淳一郎、チェロ:藤森亮一)

他日公演
2月20日(金)19:00サントリーホール 大ホール
2月22日(日) 17:00倉敷市民会館
2月23日(月・祝)16:00福岡シンフォニーホール

Picture of 長谷川京介
長谷川京介

はせがわ・きょうすけ

ソニー・ミュージックのプロデューサーとして、クラシックを中心に多ジャンルにわたるCDの企画・編成を担当。退職後は音楽評論家として、雑誌「音楽の友」「ぶらあぼ」などにコンサート評や記事を書くとともに、プログラムやCDの解説を執筆。ブログ「ベイのコンサート日記」でも知られる。

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