ダニエーレ・ルスティオーニ指揮 東京都交響楽団 第1032回 定期演奏会Bシリーズ

ルスティオーニ都響、7年半ぶりの再会――「ローマの祭」で鮮烈な頂点

2014年4月、二期会オペラ「蝶々夫人」での共演以来、ダニエーレ・ルスティオーニと東京都交響楽団は信頼関係を深めてきた。コロナ禍による来日中止(2020年7月)を経て約7年半ぶりに都響の指揮台へ戻ったこの夜は、「ローマの祭」を頂点とする劇的で華やかな再会となった。

約7年半ぶりに都響の指揮台に立ったダニエーレ・ルスティオーニ 提供:東京都交響楽団(c)堀田力丸
約7年半ぶりに都響の指揮台に立ったダニエーレ・ルスティオーニ 提供:東京都交響楽団(c)堀田力丸

前半のブラームス「ヴァイオリン協奏曲」のソリストはフランチェスカ・デゴ。愛器フランチェスコ・ルジェッリ(クレモナ、1697年製)の美音を駆使し、優雅で繊細な演奏を繰り広げた。

第1楽章ではフェルッチョ・ブゾーニ作のカデンツァを採用。ティンパニの強打で始まり、最後に低弦が主題動機で関与する異例の書法が、緊張を保ったままコーダへ導く。
第2楽章アダージョでは、オーボエから受け継がれる主題をデゴが大きく歌い上げ、息の長いフレージングが深い余韻を残した。中間部ではオペラアリアのように表情豊かに旋律を歌い、対旋律を担う都響とも二重唱のように溶け合う。
終楽章も生気あるリズムのオーケストラとともに、強靭さと気品を併せ持つブラームス像を鮮やかに描き出した。

アンコールはパガニーニ「24のカプリース」より第13番〝悪魔の微笑み〟と、バッハ「無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番」より〝サラバンド〟。いずれも繊細な表情が印象的だった。

ブラームス「ヴァイオリン協奏曲」でソリストを務めたフランチェスカ・デゴ。愛器フランチェスコ・ルジェッリの美音を駆使した演奏を聴かせた 提供:東京都交響楽団(c)堀田力丸
ブラームス「ヴァイオリン協奏曲」でソリストを務めたフランチェスカ・デゴ。愛器フランチェスコ・ルジェッリの美音を駆使した演奏を聴かせた 提供:東京都交響楽団(c)堀田力丸

後半冒頭のリムスキー=コルサコフ「スペイン奇想曲」では、ルスティオーニの明るい色彩感覚と都響の機動力が鮮やかに噛み合う。コンサートマスター水谷晃や管楽器の華麗なソロ、打楽器の切れ味が冴えわたり、祝祭的な熱狂が繰り広げられた。

レスピーギ「ローマの祭」では、ルスティオーニの真骨頂がさらに鮮烈に示された。
〝チルチェンセス〟の群衆の狂乱と迫害されるキリスト教徒たちの聖歌、襲い掛かる猛獣の咆哮(ほうこう)が、あたかも目前に出現したかのような生々しく強烈な管弦楽で描かれる。そこから巡礼者たちの疲れた足取りに始まる〝50年祭〟への場面転換が鮮やかだ。〝10月祭〟のホルンの角笛風の明るい旋律も見事。ヴァイオリンの情熱的なメロディーはまさにイタリアのカンタービレの極致で、指揮台に近いところに位置するマンドリンのセレナードもクリアに聞こえる。

特筆すべきは〝主顕祭〟の狂騒でのルスティオーニの明晰極まる指揮とそれに応える都響全楽員の渾身の演奏である。どれほど音量と色彩を解き放っても響きが混濁せず、細密画を見るようにくっきりとした音像が保たれる点は驚異的であった。

ルスティオーニの明晰極まる指揮とそれに応える都響全楽員の渾身の演奏が見事だった 提供:東京都交響楽団(c)堀田力丸
ルスティオーニの明晰極まる指揮とそれに応える都響全楽員の渾身の演奏が見事だった 提供:東京都交響楽団(c)堀田力丸

演奏後ルスティオーニはスコアのパートを確認しつつ、活躍した奏者を次々と立たせて讃えた。ホルン松原秀人(愛知室内オーケストラ)を皮切りに、クラリネットのサトーミチヨ、ファゴット長哲也、フルート柳原佑介、オーボエ神農広樹(新日本フィル)らが呼びかけに応える。さらにトランペット岡崎耕二、ティンパニ安藤芳広、オルガン大木麻理、マンドリン青山涼、そしてコンサートマスター水谷晃へ。打楽器とピアノ連弾、バンダのトランペットまで、ベストを尽くした奏者たちの晴れやかな表情が客席にまっすぐ届き、胸にじんと残った。4月から首席客演指揮者に就くルスティオーニと都響の今後が、ますます楽しみである。

(長谷川京介)

ルスティオーニと、ベストを尽くした奏者たちの晴れやかな表情が印象的だった 提供:東京都交響楽団(c)堀田力丸
ルスティオーニと、ベストを尽くした奏者たちの晴れやかな表情が印象的だった 提供:東京都交響楽団(c)堀田力丸

公演データ

東京都交響楽団 第1032回 定期演奏会Bシリーズ

1月15日(木)19:00サントリーホール 大ホール

指揮:ダニエーレ・ルスティオーニ
ヴァイオリン:フランチェスカ・デゴ
管弦楽:東京都交響楽団
コンサートマスター:水谷晃

プログラム
ブラームス:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 Op.77
リムスキー=コルサコフ:スペイン奇想曲 Op.34
レスピーギ:交響詩「ローマの祭」

ソリスト・アンコール
パガニーニ:24のカプリース より 第13番「悪魔の微笑み」
J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・パルティータ 第2番ニ短調 BWV1004 より「サラバンド」

他日公演
1月17日(土)14:00東京芸術劇場コンサートホール

Picture of 長谷川京介
長谷川京介

はせがわ・きょうすけ

ソニー・ミュージックのプロデューサーとして、クラシックを中心に多ジャンルにわたるCDの企画・編成を担当。退職後は音楽評論家として、雑誌「音楽の友」「ぶらあぼ」などにコンサート評や記事を書くとともに、プログラムやCDの解説を執筆。ブログ「ベイのコンサート日記」でも知られる。

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