フェスタ サマーミューザ KAWASAKI 2025 原田慶太楼指揮 東京交響楽団 フィナーレコンサート 慶太楼が贈る、不滅の作曲家たち

音楽は生命——不滅の音楽をエネルギッシュに奏でた圧巻のフィナーレ

フェスタサマーミューザKAWASAKI2025のフィナーレコンサートは、例年通り原田慶太楼指揮/東京交響楽団の登場。芥川也寸志の「八甲田山」から4曲、バルトークのヴァイオリン協奏曲第2番(独奏:服部百音)、ニールセンの交響曲第4番「不滅(滅ぼし得ざるもの)」が披露された。「アニバーサリー作曲家が50代に書いた作品」を揃えた、フィナーレとは思えないほどシリアスなプログラムは、当音楽祭の矜持を示す好例と言っていい。

フェスタサマーミューザKAWASAKI2025のフィナーレを飾ったのは、原田慶太楼率いる東京交響楽団 ©平舘平/ミューザ川崎シンフォニーホール
フェスタサマーミューザKAWASAKI2025のフィナーレを飾ったのは、原田慶太楼率いる東京交響楽団 ©平舘平/ミューザ川崎シンフォニーホール

芥川(生誕100年)の「八甲田山」は、昭和歌謡の如きメロディが伸びやかに歌われ、明快な音楽が流麗に表現される。バルトーク(没後80年)のヴァイオリン協奏曲は、服部百音が鮮烈な独奏を展開。最初はソロ、バック共にやや硬めで、合わせが難儀そうに思えたが、第1楽章後半以降は音の乗りや呼吸感が良くなり、緊迫感溢れるソロを鮮やかなバックが盛り立てる。服部は張り詰めた音と見事なテクニックで曲の相貌を凄絶に表出。変幻するリズムや各楽章の性格の違いも的確に描かれる。

バルトーク「ヴァイオリン協奏曲」でソリストを務めた服部百音が、見事なテクニックを披露した ©平舘平/ミューザ川崎シンフォニーホール
バルトーク「ヴァイオリン協奏曲」でソリストを務めた服部百音が、見事なテクニックを披露した ©平舘平/ミューザ川崎シンフォニーホール

ニールセン(生誕160年)の「不滅」は、ハイテンションで濃密かつ緻密な名演。冒頭から激烈な第1部は実にエネルギッシュで、第2部は木管楽器陣が瑞々しい味わいを醸し出す。弛緩しがちな第3部も緊張感が漂い、芳醇・豊穣な弦楽陣が耳を惹きつける。第4部はエネルギーが充満し、パワフルな盛り上がりをみせる。第1ヴァイオリンの後方に置かれた第2ティンパニも絶妙な存在感を発揮。本作ではオーケストラの精度が前半より一段アップした感がある。

ニールセンの交響曲第4番「不滅」は、ハイテンションで濃密かつ緻密な名演 ©平舘平/ミューザ川崎シンフォニーホール
ニールセンの交響曲第4番「不滅」は、ハイテンションで濃密かつ緻密な名演 ©平舘平/ミューザ川崎シンフォニーホール

生気に富んだ原田の指揮もさることながら、演奏機会の少ない曲が並ぶプログラムで大健闘した東響のパフォーマンスを讃えたい。今年も快演が続いたサマーミューザの充実の締めくくり。

(柴田克彦)

東響が大健闘。フェスタサマーミューザKAWASAKI 2025のラストにふさわしい快演だった ©平舘平/ミューザ川崎シンフォニーホール
東響が大健闘。フェスタサマーミューザKAWASAKI 2025のラストにふさわしい快演だった ©平舘平/ミューザ川崎シンフォニーホール

公演データ

フェスタ サマーミューザ KAWASAKI 2025
東京交響楽団 フィナーレコンサート 慶太楼が贈る、不滅の作曲家たち

指揮:原田慶太楼(東京交響楽団 正指揮者)
ヴァイオリン:服部百音
管弦楽:東京交響楽団
コンサートマスター:小林壱成

プログラム
芥川也寸志:八甲田山
No.1 八甲田山(タイトル) ― No.10 徳島隊銀山に向う ― No.37 棺桶の神田大尉 ― No.38 終焉
バルトーク:ヴァイオリン協奏曲第2番
ニールセン:交響曲第4番Op.29「不滅(滅ぼし得ざるもの)」

ソリスト・アンコール
ファジル・サイ:クレオパトラから

オーケストラ・アンコール
山本直純:好きです かわさき 愛の街

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柴田克彦

しばた・かつひこ

音楽マネジメント勤務を経て、フリーの音楽ライター、評論家、編集者となる。「ぶらあぼ」「ぴあクラシック」「音楽の友」「モーストリー・クラシック」等の雑誌、「毎日新聞クラシックナビ」等のWeb媒体、公演プログラム、CDブックレットへの寄稿、プログラムや冊子の編集、講演や講座など、クラシック音楽をフィールドに幅広く活動。アーティストへのインタビューも多数行っている。著書に「山本直純と小澤征爾」(朝日新書)。

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