佐渡裕指揮 新日本フィルハーモニー交響楽団 第658回定期演奏会

各楽器のソロが巧みなハイドンとスケール感のあるブルックナー。「ウィーン・ライン」で実感した対照の妙

9月の新日本フィル定期は、音楽監督・佐渡裕が、ハイドンの交響曲第6番「朝」、ブルックナーの交響曲第7番というオーストリアの対照的な交響曲を取り上げた。いずれも佐渡が柱に掲げる「ウィーン・ライン」の作品。こうしたテーマ性のある定期のプログラムは、それ自体が意義深い。

ウィーン・ラインの作品としてハイドンとブルックナーを取り上げた音楽監督の佐渡裕 ©寺司正彦 ※9月21日(土)すみだトリフォニーホールで行われた同内容公演にて撮影
ウィーン・ラインの作品としてハイドンとブルックナーを取り上げた音楽監督の佐渡裕 ©寺司正彦 ※9月21日(土)すみだトリフォニーホールで行われた同内容公演にて撮影

まずはハイドン初期の交響曲の演奏が興味をそそる。第6番「朝」は、フランスのサンフォニー・コンセルタンテ風、あるいはバロック時代の合奏協奏曲風のテイストを持った作品で、各楽器のソロが肝となる。今回は、弦楽器が8-7-6-4-3の切り詰めた編成で奏され、楽曲の持ち味が存分に引き出された。各楽器のソロは管・弦共に巧みで好バランス。特に第1、3楽章のフルートの爽やかなソロが光り、「朝」のムード作りに寄与した。モダン・オケの公演では、こうした小協奏曲的な作品はもとより、ハイドンの交響曲自体の演奏がめっきり減っているだけに、もっと取り上げてほしいと思うことしきりだった。

スケール感を堪能させたブルックナーの交響曲第7番 ©寺司正彦 ※写真は9月21日(土)すみだトリフォニーホールで行われた同内容公演にて撮影
スケール感を堪能させたブルックナーの交響曲第7番 ©寺司正彦 ※9月21日(土)すみだトリフォニーホールで行われた同内容公演にて撮影

後半のブルックナーは当然16型。じっくりとした運びで壮大・雄大な演奏が展開された。終始滑らかかつ確かな歩みで、大きな孤を描くような音楽が続き、第7番のスケール感を堪能させたと言えるだろうか。ただし、各楽章、各主題の表情や音色感が均質で、これを首尾一貫した表現ととるか、情景や色合いの変化に乏しいととるかによって好悪が分かれるところでもあろう。

加えて、慣例化した感のある本編内でのプレトークは、他の楽団のように本番前に時間を予告して実施した方が、嬉しい人とそうでない人の双方にとって有益なのではないだろうか。
とはいえオーケストラは全般に好演。いずれにせよ、ハイドンとブルックナーの対照の妙を実感したコンサートだった。
(柴田克彦)

公演データ

新日本フィルハーモニー交響楽団 第658回定期演奏会

9月22日(日)14:00サントリーホール
指揮:佐渡 裕
管弦楽:新日本フィルハーモニー交響楽団

プログラム

ハイドン:交響曲第6番 ニ長調 Hob.I:6「朝」
ブルックナー:交響曲第7番 ホ長調 WAB 107

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柴田克彦

しばた・かつひこ

音楽マネジメント勤務を経て、フリーの音楽ライター、評論家、編集者となる。「ぶらあぼ」「ぴあクラシック」「音楽の友」「モーストリー・クラシック」等の雑誌、「毎日新聞クラシックナビ」等のWeb媒体、公演プログラム、CDブックレットへの寄稿、プログラムや冊子の編集、講演や講座など、クラシック音楽をフィールドに幅広く活動。アーティストへのインタビューも多数行っている。著書に「山本直純と小澤征爾」(朝日新書)。

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