~12~ 留学先で出会った恩師 トビアス・リー

2023年のウィーン・フィル日本ツアーより、トビアス・リー(左)、指揮者のトゥガン・ソヒエフ(右)
2023年のウィーン・フィル日本ツアーより、トビアス・リー(左)、指揮者のトゥガン・ソヒエフ(右)

みなさまこんにちは!

この夏は日本に一時帰国して、N響の旅公演に帯同したり、京都市交響楽団さんに初めてゲスト首席として呼んでいただいたりと本当に盛りだくさんでした。そして、前からやりたいと思っていた公開レッスンも無事に開催することができ、慌ただしくも音楽で満たされた濃い時間を過ごしています。

帰国前には、ウィーン・フィルのアカデミー時代に私のメンターになってくださり、一番近くで支えてくださったヴィオラ首席奏者、トビアス・リーにお会いしてきました。

私たちが最初に出会ったのは2019年。ウィーン・フィルのサマーアカデミーのオーディションに合格して参加したとき、初めてレッスンを受けました。そのときはまだ必死に食らいつくのが精一杯で、「いつかもう一度見ていただけるくらいになりたい」と思っていました。

2年後の2021年、再びサマーアカデミーでレッスンを受けたとき、少し成長した私を見て「良くなってるよ」と褒めてくださり、帰り際には「2022年2月にtuttiのオーディションがあるから挑戦してみたら?」と声をかけてくださったのです。

それからは講習中だけでなく、プライベートでもレッスンしてくださるようになりました。オーディション前には3時間以上休みなく見てくださったこともあり、本当に忙しい中で私のために時間を作ってくださいました。

アカデミー生になってからも定期的にレッスンしてくださり、「この先、外国でどうやってヴィオラ奏者としてキャリアを作っていくのがいいか」まで、真剣に一緒に考えてくださいます。

(時計回りに)ルーカス・ストラットマン、ベネディクト・リー、筆者、トビアス・リー
(時計回りに)ルーカス・ストラットマン、ベネディクト・リー、筆者、トビアス・リー

2024年に放送されたウィーン・フィル ニューイヤーコンサートの休憩時間では、レッスンの様子も放映されました。

この春、私が人生で初めてオペラを首席で弾く作品が「薔薇の騎士」だと伝えたときも、時間を取って、ソロの部分や要注意ポイントを丁寧に教えてくださいました。

今でもお茶に誘ってくださったり、電話で話を聞いてくれたり。音楽家としてだけでなく、人としても本当に尊敬している大切な方です。

私も、いつか自分が「ベテラン」と呼ばれるようになれたら、あんなに忙しい中でも若手のためにレッスン以外の時間まで作ってくださる彼のような人になりたいと思います。

有冨 萌々子

Momoko Aritomi

東京都立総合芸術高等学校音楽科ヴァイオリン専攻卒業後、ヴィオラに転向。東京藝術大学ヴィオラ専攻を経て、ウィーン国立音楽大学学部、修士課程共に満場一致の首席で卒業。
日本演奏家コンクール、ウィーン・ディヒラーコンクール、アントン・ルービンシュタイン国際コンクール、東京音楽コンクール、ブラームス国際コンクールなど、数々の国内外のコンクールにて入賞、優勝。
2019/2020年度公益財団法人ローム ミュージック ファンデーション奨学生。2022年度オーストリアHFPヤングアーティスト賞受賞。NHK-FMリサイタル・パッシオ、ヤングプラハ国際音楽祭などに出演。CHANEL Pygmalion Days 2023年参加アーティスト。
これまでにヴァイオリンを玉井菜採氏、窪田茂夫氏に、 ヴィオラを大野かおる氏、Wolfgang Klos, Ulrich Schönauer, Thomas Selditz, Tobias Leaの各氏に師事。
2022-2024年度ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のアカデミー生として研鑽を積み、同時期にウィーン国立音楽大学にてセルディッツ教授のアシスタント及び講師も勤めた。
国内外のオーケストラでゲスト首席奏者を務めるだけでなく、ソリストとして東京フィル、日本フィル、新日本フィル、スロヴァキア国立放送交響楽団と共演するなど、オーケストラ奏者、ソリスト、室内楽奏者、指導それぞれで今最も期待されている若手実力派ヴィオラ奏者である。

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