~1~ ウィーンへ羽ばたいた転機 東京藝大からウィーン国立音楽大へ

ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団で日本人初のアカデミー生として研鑽を積み、現在国内外で活躍するヴィオラ奏者 有冨萌々子さんの新連載が始まります。アカデミーで経験したウィーン・フィルや国立歌劇場における公演について、またオーストリアの音楽事情や日常の様子など、現地ならではの話題を有冨さんに綴っていただきます。

遡ること2010年の春。 中学校2年生の終業式を休み、家族と一緒にはじめてのヨーロッパ旅行に行きました。ヴァイオリンを持って。
あの時、ウィーンの街並み、雰囲気、上品さに一瞬で心奪われ、一目惚れのような感覚を味わったことを今でも覚えています。恋愛ですら一目惚れしたことなんてないのに。
街をただ歩くだけで楽しかったし、ウィーン国立音大教授のレッスンも受けることができて、信じられないほど楽しかった。そして、すぐに家族に質問しました——「どうしたらウィーン国立音楽大学という所に入学できるのかな?」

あれから9年。音楽高校卒業後、ヴァイオリンからヴィオラへ転科し、東京藝大に入学。大学に入ってすぐ、ウィーン国立音楽大学の夏季マスタークラスのため、はじめて1人で海外へ行きました。そのマスタークラス参加こそが、ウィーンで学びたい憧れが確信に変わったときでした。
マスタークラスで出会ったヴォルフガング・クロース教授は、私が「ウィーンに留学するのが夢です」と言った時、自分が見てあげるから、と誘ってくださり、最終日には入試要項を渡してくださったのです。夢が現実になるかもしれない、この機会を絶対に逃したくないと強く思った私は、藝大2年生のときに受験、合格しました。
昔から、藝大に入るために頑張ってきたし、入学後は藝大同期と仲良くなり、親友もでき、同期でカルテットを組み、恋人だっていたけれど、それでもウィーンに行きたい気持ちはあまりに強く、あっさり休学する決断をしました。それほどに強い情熱でした。

そんな私は今、ウィーン在住7年目を終えました。この7年、何を見て、何を学んで、何に感動して、何に落ち込んだか。そして8年目にしてようやく、ウィーンだけでない世界に視野を広げる決断をした私は、これからどう生きるのか。そんな思いを、思い出を織り交ぜ、読者の皆様と共有したいと思います。これからどうぞよろしくお願い致します。

有冨萌々子

有冨 萌々子

Momoko Aritomi

東京都立総合芸術高等学校音楽科ヴァイオリン専攻卒業後、ヴィオラに転向。東京藝術大学ヴィオラ専攻を経て、ウィーン国立音楽大学学部、修士課程共に満場一致の首席で卒業。
日本演奏家コンクール、ウィーン・ディヒラーコンクール、アントン・ルービンシュタイン国際コンクール、東京音楽コンクール、ブラームス国際コンクールなど、数々の国内外のコンクールにて入賞、優勝。
2019/2020年度公益財団法人ローム ミュージック ファンデーション奨学生。2022年度オーストリアHFPヤングアーティスト賞受賞。NHK-FMリサイタル・パッシオ、ヤングプラハ国際音楽祭などに出演。CHANEL Pygmalion Days 2023年参加アーティスト。
これまでにヴァイオリンを玉井菜摘氏、窪田茂夫氏に、 ヴィオラを大野かおる氏、Wolfgang Klos, Ulrich Schönauer, Thomas Selditz, Tobias Leaの各氏に師事。
2022-2024年度ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のアカデミー生として研鑽を積み、同時期にウィーン国立音楽大学にてセルディッツ教授のアシスタント及び講師も勤めた。
国内外のオーケストラでゲスト首席奏者を務めるだけでなく、ソリストとして東京フィル、日本フィル、新日本フィル、スロヴァキア国立放送交響楽団と共演するなど、オーケストラ奏者、ソリスト、室内楽奏者、指導それぞれで今最も期待されている若手実力派ヴィオラ奏者である。

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