幻想交響曲で山田が見せたスペシャルなこだわり
——27日の公演で幻想交響曲第5楽章、舞台裏で演奏されるC(ド)とG(ソ)の鐘の音にピアノを重ねていたように聴こえましたが。
山田 おっしゃる通りピアノを重ねていました。今回の日本公演で幻想交響曲を演奏したのは、27日の東京が3回目でした。最初に兵庫、次に千葉公演で、この時は鐘だけで演奏していましたが、何か少し足りないなと、もう一工夫できないかと考えました。昔、一回だけそのピアノと重ねたことがありました。それは本物の鐘がなくてチューブラベル(金属の管を音程別に並べた楽器、NHKのど自慢の採点でも使われている)で代用した時に、やはり物足りなさを感じてピアノを重ねたことを思い出しました。オクターブ下の音が加わったことで不気味さが出たことを思い出し、試してみたのです。
——本番ではとても効果的でした。
山田 裏話をしますと千葉公演の帰りの車の中で、そんなことを思いついて、周りのスタッフの方が大変ですよ。さてどうしようかってピアノをね。サントリーホールの舞台袖って決して広くありません。そこにピアノを置けるのか、などから始まって、じゃあタイミングどうやってみるんだとか、指揮をどうするんだとかっていうさまざまな調整を行って。リハーサルやってみても、ちょっとイメージと違って、開場ギリギリまで練習しました。鐘だけのため20分ぐらいやり取りして行ったり来たりして。まあまあ一番いいとこになったかなと思います。

——モンテカルロ・フィルはオペラのオケでもありますが、マエストロもピットに入ってオペラを振ることもありますか?
山田 あります。オペラだけでなくバレエも年1回は必ずやっています。(モナコで)オペラを最初に指揮したのはサン=サーンスの「サムソンとダリラ」、次にベルクの「ヴォツェック」、そしてベルリオーズの「ファウストの劫罰」をオペラ仕立てでやりました。来年はラヴェルの「子どもと魔法」というオペラを指揮します。この作品は1925年の3月21日モナコで初演されたオペラです。来年は初演から百年に当たり、初演と同じ日に同じ劇場で上演されます。その指揮させていただくという光栄にあずかりました。
続く。次回はシカゴ交響楽団との初共演について

山田和樹のプロフィールは国内のマネージメントを担当するジャパン・アーツのホームページ(山田 和樹 | クラシック音楽事務所ジャパン・アーツクラシック)をご覧ください。

みやじま・きわみ
放送番組・映像制作会社である毎日映画社に勤務する傍ら音楽ジャーナリストとしても活動。オーケストラ、ドイツ・オペラの分野を重点に取材を展開。中でもワーグナー作品上演の総本山といわれるドイツ・バイロイト音楽祭には2000年代以降、ほぼ毎年訪れるなどして公演のみならずバックステージの情報収集にも力を入れている。