九州交響楽団と指揮者シモーネ・メネセスが贈る ヴィラ=ロボスの「未来へ宛てた手紙」

スペシャリストの指揮によるヴィラ=ロボスの世界

踊るように滑らかに、生き生きと強く。シモーネ・メネセスの指揮は、聴衆の耳目を捉える。パリ在住のブラジル人マエストラであるメネセスは、2026年11月28日(土)に福岡で、九州交響楽団とともに特別なプログラムを披露する。

九州交響楽団の11月定期を指揮するシモーネ・メネセス
九州交響楽団の11月定期を指揮するシモーネ・メネセス (c)Daniela Cerasoli

世界的写真家セバスチャン・サルガドとのプロジェクトなど、数々のクリエイティブな企画を手がけてきたメネセスに「これまででもっとも興味深いプログラムのひとつ」と言わしめる本公演。軸となるのは、メネセスと同郷の作曲家ヴィラ=ロボスだ。
中でも注目すべきは、合唱とオーケストラが一体となり、祈りとも儀式とも思える音楽を生む「ショーロス第10番」。 初演からちょうど100年の今、滅多に演奏されない傑作を、ヴィラ=ロボスに取り組み続けてきたスペシャリストの指揮で聴く貴重な機会といえる。

熱帯に蒔かれたクラシック音楽の種子

パリのシャンゼリゼ通りのカフェで、メネセスは穏やかに、かつ情熱を込めて語る。

「ヴィラ=ロボスの音楽は有機的で、自然の音と深く結びついています。特にブラジルの熱帯地方の自然に存在するものを取り入れています。
ヴィラ=ロボスは、熱帯の地にクラシック音楽の種子が蒔かれたような存在だと思います。そこから生まれたのが〝ショーロス〟のような作品で、クラシック音楽でありながら、ブラジルの土地ならではの特別な活気に満ち溢れています。ストリートミュージックや民俗音楽の要素も自由に取り入れられていて、ダンスや大自然、都会の音楽とクラシック音楽の融合といえるでしょう。
〝ショーロス第10番〟では、合唱と打楽器によって儀式的な音楽が生まれ、形を変えていくのが聴きとれます。神がかったところのある、とても特別な作品です」

九州交響楽団
九州交響楽団

音楽から漂い出す甘美な誘惑

パリ音楽院で学び、現在もパリを拠点にするメネセス。 今回、ヴィラ=ロボスとともにラヴェルの「道化師の朝の歌」、そしてドビュッシーの管弦楽のための「映像」より“イベリア”を演奏する。フランス作品をどう聴かせるのだろうか。

「ドビュッシー、ラヴェルといったフランスの作曲家と、パリに長年滞在したヴィラ=ロボスには、強い結びつきがあります。彼らは色彩とのつながりが深く、異なる楽器を組み合わせ、さまざまに異なる雰囲気を生み出すことに関心を持っていました。
今回演奏するのは、ラテンの色を前面に出すのではなく、「作曲家の記憶の中にあるラテンの色彩」をとどめるような作品です。ヴィラ=ロボスにはない色をもたらしてくれるはずですし、そこには甘美な誘惑のようなものも漂っています」

「ブラジル風バッハ第4番より前奏曲」合唱編曲版の世界初演

プログラムにヴィラ=ロボスの「大きな橋」をかけるため、メネセスは自ら合唱版に編曲したヴィラ=ロボス「ブラジル風バッハ第4番より前奏曲」を世界初演する。

「私が初めて指揮をした曲のひとつで、ブラジルの文化において、とても重要な作品とされています。アメリカ人にとってのバーバーの〝弦楽のためのアダージョ〟のようなものでしょう。私には集団の哀歌、つまり苦しみながらも希望を抱く人々の歌のように聴こえていた、ずっと身近にあった作品です」

ヴィラ=ロボスのショーロスへの序奏、ショーロス第1番でギター独奏をつとめる山下愛陽
ヴィラ=ロボスのショーロスへの序奏、ショーロス第1番でギター独奏をつとめる山下愛陽

ヴィラ=ロボスが遺した「未来への手紙」

どうして今、ヴィラ=ロボスが私たちの心を捉えるのだろうか。

「ヴィラ=ロボスは、彼の時代にはあまり話題にされていなかった環境問題についても語っていました。現代の私たちにとっては、重要なことですよね。ヴィラ=ロボス自身、彼の作品は後世に宛てた手紙なのだとよく話していました。つまり、先見の明がある作曲家だったのです。
〝作品は短くあるべきだ〟と考えていた点も、短い曲に慣れている現代人に合っているのではないでしょうか。ブルックナーの交響曲を1曲聴くのは難しいという人にとっても、非常に濃密な13分間の〝ショーロス第10番〟は問題ないはずです。

20年前のシベリウスは数年前のヴィラ=ロボスのような存在で、〝フィンランディア〟とヴァイオリン協奏曲しか知られていませんでした。しかし、パーヴォ・ヤルヴィたちが重要なオーケストラとともにその他の曲の演奏機会を増やしたことによって、徐々に普及していきました。私たちは、ヴィラ=ロボスでも同様の流れを作り出そうとしています。
世界中でも指折りの洗練された聴衆である日本の皆さまにお会いして、音楽を共有し、インスピレーションを得ていただく日を心待ちにしています」

九州交響楽団とメネセスによって、ヴィラ=ロボスから現代の聴衆へと手渡される特別な手紙。ぜひホールで受け取ってほしい。

シモーネ・メネセス(指揮) Simone Menezes (Conductor)

高いプログラム構成力と音楽性を備えたフランスを拠点とする指揮者。ブラジル生まれでイタリアのルーツを持つ彼女は、自身を様々な音楽の伝統と芸術分野を結びつける架け橋と捉えており、そのレパートリーは古典派の作曲家から、チャイコフスキーやフランス印象派、ラテンアメリカの作品まで多岐にわたる。

プログラムの構成と芸術性を重視しており、自身が創設し率いるアンサンブルKとプロジェクト「メタノイア」を制作し、2023年国際クラシック音楽賞で最優秀ビデオ賞を受賞。また、ブラジル人写真家のセバスチャン・サルガドの写真とフィリップ・グラスとヴィラ=ロボスの作品を組み合わせたプロジェクト「アマゾニア」は、その後世界中の15以上のオーケストラと共演。日本にも度々訪れており、2025年にはカルティエのサポートを得て、万博関連公演として大阪フィルとファジル・サイ《Mother Earth》協奏曲の世界初演を果たした。近年は、ロスフィル、パリ管、フィルハーモニア管、フランクフルト放響、ケルン・ギュルツェニヒ管、ウィーン放響など、数々の著名オーケストラと共演を重ねている。

メネセスはサンパウロとパリで学び、英国王立音楽院でコリン・メッターズに師事。パーヴォ・ヤルヴィのアシスタントも務めた。ラテンアメリカで成功を収めた後ヨーロッパに拠点を移し、以来、国際的に精力的に活動を続けている。

公演データ

九州交響楽団 第444回定期演奏会

2026年11月28日(土) 15:00

アクロス福岡シンフォニーホール
指揮:シモーネ・メネセス
ギター独奏*:山下愛陽
合唱:九響合唱団
管弦楽:九州交響楽団

ラヴェル:道化師の朝の歌
ヴィラ=ロボス:ショーロスへの序奏*
ヴィラ=ロボス:ショーロス 第1番*
ドビュッシー:管弦楽のための「映像」より〝イベリア〟
ヴィラ=ロボス(シモーネ・メネセス編):ブラジル風バッハ第4番より前奏曲(合唱版世界初演)
ヴィラ=ロボス:ショーロス 第10番

公演詳細 https://www.kyukyo.or.jp/cms/16240

〈問い合わせ〉
九響チケットサービス 092-823-0101(平日9:00~17:30)
九響オンラインチケット https://kyukyo-onlineticket.jp/order-top.php?on=1

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