<「教会音楽の父」パレストリーナ生誕500年記念>
恐らく二度とない“究極のパレストリーナ・プログラム”
1979年に合唱学者・指揮者のハリー・クリストファーズによってロンドンで設⽴され、以来50年以上にわたって世界最⾼峰の合唱団として君臨してきたThe Sixteen(ザ・シックスティーン)。古楽から現代⾳楽まで5世紀をはるかに超える驚異のレパートリーを誇り、国際的に権威ある賞を数多く受賞しているほか、世界各国の主要なコンサートホールや⾳楽祭にも継続的に出演するなど、⾼い評価を受けています。
2025年は彼らの重要なレパートリーのひとつであるイタリア・ルネサンス後期の宗教⾳楽の⼤家、ジョヴァンニ・ピエルルイージ・ダ・パレストリーナの⽣誕500周年にあたり、この記念の年に、21年振りの来⽇公演が実現します。
来日を前に、指揮者のハリー・クリストファーズに今回のプログラムや公演へ想いを伺いました。
── 21年ぶりにザ・シクスティーンが日本に戻ってくると聞き、多くのファンが心待ちにしています。今回のツアーについて、どんなお気持ちですか?
まず最初に言いたいのは、「本当に長い間お待たせしました」ということです。これまで日本でのツアーをとても楽しんできましたが、21年という年月は本当に長いですね。ですから今回、また素晴らしい日本の文化を体験しながら、ザ・シクスティーンの核となる音楽をお届けできることに胸が高鳴っています。
私たちはお互いの存在を心から楽しむアンサンブルであり、同時にお客様とのつながりを大切にしています。これまでたくさんの録音をしてきましたが、生の演奏に勝るものはありません。ライブこそが、私たちの力を最大限に引き出してくれるのです。
── 2025年はパレストリーナの生誕500周年を迎えます。長い間日本では取り上げられていませんでしたが、今回なぜこの作曲家を日本に紹介しようと思われたのですか?
パレストリーナは、世界の宗教音楽において比類のない存在です。彼の緻密なポリフォニーは、何世紀にもわたり多くの作曲家が学び、影響を受けてきました。
「音楽の王」「教会音楽の救世主」とも呼ばれる彼の功績を称え、2025年はちょうど生誕500年。私たちはこの数年、彼の人生のあらゆる時期のあまり知られていない美しい作品を録音し、その全体像をより正確に伝えようとしてきました。
彼は104のミサ曲、無数のモテット、オファトリウムの連作、賛歌、そしてマニフィカトや「サルヴェ・レジナ」、『雅歌』の一連の曲など、膨大な作品を残しました。しかしその多くは今ではほとんど演奏されていません。だからこそ、今回日本には幅広いプログラムを持ってきたのです。あわせて、今年90歳を迎えるアルヴォ・ペルト、そして長年交流を続けてきたジェームズ・マクミランという、現代の二人の作曲家もお祝いしたいと思いました。
──これまであなたは、時代の離れた作曲家を組み合わせたプログラムを多く組まれてきましたね。今回の日本公演のプログラムの組み合わせについて、どんな考えがあったのでしょうか?
私は“対比”というものが大好きなんです。異なる作曲家のスタイルを並べることで、それぞれの魅力がより際立つと思うからです。
今回のプログラムはわりと自然に決まりました。なぜなら、ちょうどパレストリーナの500年、そしてペルトの90年という二つの大きな記念が重なったからです。
パレストリーナは、過去の偉大な巨匠。ペルトは 静謐(せいひつ)さとシンプルさの中に深みを持つ作曲家です。彼は50年ほど前、自ら「作曲家として再び歩き始めた」と語り、グレゴリオ聖歌に立ち返って“ティンティナブリ(鐘の響き)”の技法を探求しました。
そしてマクミランは、現代でも最も優れた宗教音楽の作曲家のひとりだと思います。彼自身も「自分の作曲の旅は、1960年代のエディンバラの教会で聴いたグレゴリオ聖歌やパレストリーナのモテットから始まった」と語っています。まさに音楽が一巡するような、理想的なプログラムです。
── 聴きどころや注目してほしいポイントはありますか?
プログラムには素晴らしい作品が並んでおり、それぞれに特別な魅力があります。私が特に好きなのは、パレストリーナの《スターバト・マーテル》に見られる二重合唱(8声)の響きです。そこには優しさと苦しみ、そして希望が見事に表現されています。
ペルトの《ダ・パーツェム》は、静寂の中に引き込まれるような平和への祈りを感じます。
パレストリーナのミサ曲《ドレミファソラ》(ヘクサコルド・ミサ)は私たちにとっても驚きの連続でした。特に第2ソプラノは6音の音型を長い音価で上下に動くので大変ですが、《アニュス・デイ》の広がりと《クレド》のリズム感は本当に見事です。
マクミランの『とこしえの王として、主は御座をおく』(《ストラスクライドのモテット集》より)では、中間部のアルト独唱にご注目ください。まるで楽器のように響きます。
そして1曲だけ挙げるなら、『あなたのほおは美しく飾られ』(《ソロモンの雅歌》より 第 6 番)。これぞパレストリーナの真骨頂です。言葉の一つひとつを、色とりどりの音で描き出しています。
── The Sixteenによるパレストリーナの解釈について教えてください。
パレストリーナは、あらゆる時代の作曲家たちが模範とした“職人の中の職人”です。
彼の音楽は美しく響き合い、たくさんの掛留(サスペンション)を使いながら、常に旋律へと戻っていく構造をしています。
ただ、その完璧な技法ゆえに、時に彼の音楽が“あまりに完璧すぎて学術的”に聞こえてしまうこともあります。
昔の私は、彼の音楽に自分の解釈を乗せすぎてしまい、うまく表現できなかった時期がありました。
やがて「もっと音楽自身に語らせる」ことを学び、彼を信頼するようになったんです。
今では、息の流れを大切にし、フレーズを切らずに自然に呼吸するように歌うことで、言葉の意味を生かし、音楽全体を呼吸と一体にしています。
『雅歌』のモテットなどには、詩の絵画的な表現が溢れています。私たちはその詩の美しさを大切に、エネルギーと生命感を持って演奏し、音楽の光としてのパレストリーナを讃えたいと思っています。
──The Sixteenの録音には、英国以外の作品、たとえばポーランドやイベリア半島のルネサンス音楽なども多いですね。これからもア・カペラの枠を超えた探求を続けますか?また、The Sixteen ならではの特徴はどんなところにあると思いますか?
数年後には、The Sixteenは結成50周年を迎えます。
これまでに、ヨーロッパ各地のルネサンスやバロック音楽はもちろん、プーランク、ブリテン、マクミラン、ペルトなど現代の作曲家の作品も多く手がけてきました。新作委嘱もたくさん行っています。
私たちは常に「作曲家の意図に忠実であること」を大切にしていますが、特にルネサンス音楽では、現代の聴衆にも意味が伝わるようにしたいと思っています。
もともと教会の典礼のために書かれた音楽を、私たちはコンサートホールへと持ち出しています。だからこそ、そこに込められた言葉の意味や祈りの感情を、声と表情で伝えたいのです。
The Sixteenの音色は温かく柔らかいですが、何より特徴的なのは、歌い手一人ひとりが声だけでなく表情でも語りかけること。まるで舞台俳優のように。
── 最後に、日本のファンへメッセージをお願いします。
日本に戻り、皆さんと再びお会いできることを本当に楽しみにしています。
あまりにも長い時間が経ってしまいました。どうか会場で声をかけてください。懐かしいお顔や新しい出会いを心から歓迎します。これまでの訪問で感じた日本のあたたかさとおもてなしの心、そして文化への深い愛に大きな敬意を抱いています。皆さんとまたご一緒できる日を心待ちにしています。
公演概要
神奈川県⺠ホール presents グリーンホール相模⼤野開館35周年記念
The Sixteen(ハリー・クリストファーズ 指揮)
https://www.kanagawa-kenminhall.com/d/sixteen_sagamihara
⽇ 時
2025年11⽉22⽇(⼟)14:00開演(13:30開場)
会 場
相模⼥⼦⼤学グリーンホール ⼤ホール (相模原市南区相模⼤野4-4-1)
⼩⽥急線「相模⼤野駅」北⼝より徒歩約8分
https://hall-net.or.jp/01greenhall/access/
出 演
ハリー・クリストファーズ(指揮)The Sixteen(合唱)
料 ⾦
全席指定(税込)S席:4,500円 A席:3,500円 B席:2,500円
24歳以下(エリア・枚数限定):1,000円
チケット
●チケットかながわ 電話.0570-015-415(10:00〜18:00)
https://www.kanagawa-kenminhall.com/d/sixteen_sagamihara
[窓⼝]KAAT神奈川芸術劇場(10:00〜18:00) 神奈川県⽴⾳楽堂(13:00〜17:00/⽉曜休)
●チケットMove 電話.042-742-9999(10:00〜19:00)
https://move-ticket.pia.jp/
[窓⼝]相模⼥⼦⼤学グリーンホール/杜のホールはしもと/相模原市⺠会館(10:00〜19:00)
※休館⽇はチケット窓⼝も休業します
●チケットぴあ https://t.pia.jp/ (Pコード:302-642)
●イープラス https://eplus.jp/
アクセシビリティ(鑑賞サポート)
https://social-inclusion.kanagawa-arts.or.jp/support/147#support_content
託児サービス
料⾦:2,000円 ※予約期間:7/22(⽕) 〜 11/14(⾦) までの間に要事前予約
〈お問い合わせ・申込先〉
株式会社明⽇⾹ 電話.0120-165-115(⼟⽇祝⽇を除く10:00〜17:00)
【 主 催 】神奈川県⺠ホール(指定管理者:公益財団法⼈神奈川芸術⽂化財団)
【 共 催 】公益財団法⼈相模原市⺠⽂化財団
【 助 成 】⽂化庁⽂化芸術振興費補助⾦(劇場・⾳楽堂等機能強化推進事業(劇場・⾳楽堂等機能強化総合⽀援事業))|独⽴⾏政法⼈⽇本芸術⽂化振興会
【 お問合せ 】神奈川県⺠ホール事業課 電話.045-662-5901(代表)平⽇10:00〜17:00










