実力派ピアニストたちの力が入った新譜が出てきた。いずれも本質的な音楽性で勝負した秀作ばかり。心に染み入る音色に浸りたい。
<BEST1>
「Heimat/故郷」
三浦謙司(ピアノ)
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第23番「熱情」/シューマン:「子供の情景」/ブラームス:7つの幻想曲、他
<BEST2>
ショパン マズルカ集 第1巻
ラファウ・ブレハッチ(ピアノ)
<BEST3>
ラヴェル ピアノ独奏曲全集
イリーナ・メジューエワ(ピアノ)
ドイツを拠点にするコスモポリタンの三浦謙司にとって、自分が帰属する「故郷」とは、という問いは重い意味を持っていた。内面的な思索の旅を続け、得た答えに対する「音の手紙」が本作だ。ベートーヴェン、シューマン、ブラームスが内包する感情の深さや誠実な表現力を見いだすことで、自身がいま故郷と感じられる場所・ドイツへ深く足を踏み入れることが出来たという。
したがってどの曲でも、語るべき自分のことばをもった確信に満ちた音楽作りに、胸を打たれる。作品のはらむドラマ性を明確にとらえ、自分のものとした「熱情」の安定感、父親のまなざしで深々としたロマンティシズムを引き出した「子供の情景」の温もり、骨太な情熱がほとばしる「7つの幻想曲」の沈潜(ちんせん)など、それぞれに聴きどころがある。地に足の付いた説得力や、落ち着いた余裕ある表情は、このピアニストが獲得した内面的な充実を示して余りある。熱い思いのこもるCD2作目になった。
2005年のショパン国際ピアノ・コンクールを制したラファウ・ブレハッチは、久々のポーランド出身者だった。満を持して録音に臨んだマズルカ集では、ショパンと同郷ゆえの深い理解と共感を示し、たゆたう抒情と同化している。純度の高いクリーンなピアニズムが、作品にふさわしい。以上の2点はベルリンのテルデックス・スタジオでの収録・制作で、デリケートに響きをとらえた録音も優れている。
昨年はラヴェル生誕150周年でもあった。その節目を最後に飾ったディスクがイリーナ・メジューエワによるピアノ独奏曲全集。持ち前の鋭敏なセンスとスピーディーな打鍵を発揮して、ヴィヴィッドに個々の魅力を明らかにしていく。1922年製ニューヨーク・スタインウェイの美麗な表現力が華を添える。相模湖交流センターのラックスマンホールでの録音も優秀。
ふかせ・みちる
音楽ジャーナリスト。早大卒。一般紙の音楽担当記者を経て、広く書き手として活動。音楽界やアーティストの動向を追いかける。専門誌やウェブ・メディア、CDのライナーノート等に寄稿。ディスク評やオーディオ評論も手がける。










