毎秋恒例の音楽祭「サントリーホールARKクラシックス2025」が10月3~7日に開催される。人気の高いピアノの辻󠄀井伸行とヴァイオリン・指揮の三浦文彰を中心に、大ホールとブルーローズ(小ホール)で計11公演を行う。バラエティーに富んだ豪華メニューから、聴きどころをご紹介しよう。(深瀬満)

このイベントは、同ホールやアーク・カラヤン広場、周辺の大使館・美術館・飲食店までカバーする街の音楽祭「アーク・ヒルズ・ミュージック・ウィーク」(10月3~12日)のオープニングを兼ねる。辻󠄀井と三浦をアーティスティック・リーダーに、特別編成のレジデント・オーケストラ「アーク・フィルハーモニック」が大ホールへ出演。ブルーローズでは、バロックからジャズまで幅広い好企画が並ぶ。アーク・カラヤン広場では、全公演を大スクリーンで無料鑑賞できるライブ・ビューイングが開かれるのも楽しい。
8回目となる今年最大の目玉は、ヴァイオリンのレジェンドで指揮にも活発に取り組むピンカス・ズーカーマンの登場だ。彼は6月に東京フィルへ客演し、当サイトの速リポでご紹介したばかり。10月4日(土)17時から大ホールで行う回は「ピンカス・ズーカーマンの芸術」と銘打って、独奏と指揮の両方を披露する。まず三浦のヴァイオリン、自身のヴィオラと指揮でモーツァルトのヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲を共演。あとは指揮に専念し、辻󠄀井のソロでモーツァルトのピアノ協奏曲第26番「戴冠式」を演奏。後半ではドヴォルザークの交響曲第8番ト長調を取り上げる。いずれも名旋律にあふれる傑作で、腕利きぞろいのアーク・フィルハーモニックと快演を聴かせてくれそうだ。

翌5日(日)17時から大ホールでは「豪華ソリストの競演」と題し、やはり重厚なプログラムをお届けする。指揮はズーカーマンの薫陶を受けた三浦が受け持つ。最初はズーカーマンのヴァイオリン、カナダの実力派アマンダ・フォーサイスのチェロ、ベテラン清水和音のピアノを迎えたベートーヴェンの三重協奏曲と、豪勢な組み合わせ。続いて辻󠄀井のソロによるグリーグのピアノ協奏曲へ進む。後半は、三浦がチャイコフスキーの交響曲第5番で渾身の力演を繰り広げる。これも名曲尽くしの一夜だ。


ブルーローズ(小ホール)でのプログラムも魅力あふれる。まだ残席のある回では、4日の「清水和音 室内楽スペシャル」で、円熟を深める清水を中心としたクァルテットが、モーツァルトとドヴォルザークのピアノ四重奏曲第2番などを奏でる。ヴァイオリンに南紫音、ヴィオラに鈴木学、チェロに伊東裕と、メンバーも充実している。

5日は「曽根麻矢子 バッハ・スペシャル」で、曽根が「パルティータ第1番」などバッハの主要作をチェンバロで弾く。「音楽の捧げ物」では若松夏美(ヴァイオリン)、福澤宏(ヴィオラ・ダ・ガンバ)、前田りり子(バロック・フルート)と、ピリオド楽器の名手が勢ぞろいする。6日は「アーク・ブラス スペシャル・ゲスト セルゲイ・ナカリャコフ」として、「スターウォーズBRASS組曲」などブラスの名曲で盛り上げる。


公演データ
サントリーホールARKクラシックス2025
10月3日(金)~7日(火) サントリーホール大ホール&ブルーローズ(小ホール)
アーティスティック・リーダー
ピアノ:辻󠄀井伸行
指揮・ヴァイオリン:三浦文彰
スペシャル・ゲスト
指揮・ヴァイオリン・ヴィオラ:ピンカス・ズーカーマン
ゲスト・アーティスト
チェロ:アマンダ・フォーサイス
ピアノ:清水和音
トランペット、フリューゲルホルン:セルゲイ・ナカリャコフ
ハープ:吉野直子
チェンバロ:曽根麻矢子
ヴァイオリン:南 紫音
ヴィオラ:鈴木 学
チェロ:伊東 裕 ほか
プログラム詳細はサントリーホールARKクラシックス2025 公式WEBページをご覧ください
https://avex.jp/classics/arkclassics2025/

ふかせ・みちる
音楽ジャーナリスト。早大卒。一般紙の音楽担当記者を経て、広く書き手として活動。音楽界やアーティストの動向を追いかける。専門誌やウェブ・メディア、CDのライナーノート等に寄稿。ディスク評やオーディオ評論も手がける。