春本番、新年度のスタートに合わせて音楽界も活況を呈しています。今回は3月のステージからピカイチを、5月開催の公演からイチオシを選者の皆さんに紹介していただきます。
先月のピカイチ
◆◆3月◆◆ 東条碩夫(音楽評論家)選
〈ふくやま芸術文化ホール オーケストラ福山定期 Vol.12 京都市交響楽団〉
3月22日(日)ふくやま芸術文化ホール リーデンローズ大ホール
沖澤のどか(指揮)/隠岐彩夏(フィオルディリージ)/山下裕賀(ドラベッラ)/糸賀修平(フェランド)/大西宇宙(グリエルモ)/鵜木絵里(デスピーナ)/宮本益光(ドン・アルフォンソ)/京響コーラス
モーツァルト:歌劇「コジ・ファン・トゥッテ」演奏会形式
次点
〈東京・春・音楽祭2026 合唱の芸術シリーズ vol.13〉
3月25日(水)東京文化会館 大ホール
マレク・ヤノフスキ(指揮)/デイヴィッド・バット・フィリップ(ヴァルデマール王)/カミラ・ニールント(トーヴェ)/ミヒャエル・クプファー=ラデツキー(農夫)/オッカ・フォン・デア・ダメラウ(山鳩)/トーマス・エベンシュタイン(道化師)/アドリアン・エレート(語り手)/東京オペラシンガーズ/NHK交響楽団
シェーンベルク:「グレの歌」
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~沖澤&京響 天馬空を行く感の「コジ・ファン・トゥッテ」~
沖澤のどかの進境著しいオペラ指揮。快活なテンポで、天馬空を行く感の「コジ」をつくり出した。京響の切れの良い演奏と、粒ぞろいの歌手たちの軽快な歌唱。これほど胸のすくような「コジ」はめったに聴けないだろう。一方「グレの歌」では、円熟の巨匠ヤノフスキが大編成の管弦楽と声楽とを鮮やかに制御、この一種怪奇な物語を人間味あふれる音楽として語ってみせた。歌手陣ではニールントとフォン・デア・ダメラウが際立っていた。
来月のイチオシ
◆◆5月◆◆ 東条碩夫(音楽評論家)選
〈東京交響楽団 第740回定期演奏会(音楽監督就任披露)〉
5月16日(土)サントリーホール
ロレンツォ・ヴィオッティ(指揮)
ベートーヴェン:交響曲第1番/マーラー:交響曲第1番「巨人」
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〈ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団 日本公演〉
5月11日(月)サントリーホール
ラハフ・シャニ(指揮)/チョ・ソンジン(ピアノ)
モーツァルト:「後宮からの誘拐」序曲/ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第1番/マーラー:交響曲第1番「巨人」
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~新音楽監督ヴィオッティと東京響の初定期~
新しい音楽監督との最初の定期公演は、やはり注目したいものだ。ノットと黄金時代を築いた東京響が、新任のヴィオッティのもとでどう変貌するか。23日・24日の「ダフニスとクロエ」も面白そうだが、ここでは第一弾の「巨人」に期待しよう。ミュンヘン・フィルも、今秋から首席指揮者に世界屈指の精鋭シャニを迎えることになっている。新しいコンビとしての初の日本公演が注目される。東京公演は2回あるが、ここでは同じ「巨人」を。
先月のピカイチ
◆◆3月◆◆ 柴田克彦(音楽ライター)選
〈国際音楽祭NIPPON 2026 フォーレ室内楽全曲マラソンコンサート〉
3月1日(日)横浜みなとみらいホール
諏訪内晶子、ベンヤミン・シュミット、金川真弓(いずれもヴァイオリン)/赤坂智子(ヴィオラ)/佐藤晴真(チェロ)/阪田知樹、北村朋幹(ピアノ)他
フォーレ:ヴァイオリン・ソナタ第1・2番、ピアノ四重奏曲第1・2番、ピアノ五重奏曲第1・2番、他
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〈東京都交響楽団 第1038回定期演奏会Aシリーズ〉
3月4日(水)東京文化会館 大ホール
大野和士(指揮)/砂川涼子(ソプラノ)/山下裕賀(メゾ・ソプラノ)/駒形貴之(テノール)/新国立合唱団/東京少年少女合唱隊
アンドレ・プレヴィン:春遠からじ(日本初演)/ドビュッシー:管弦楽のための「映像」より〝春のロンド〟/ブリテン:春の交響曲
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~よくぞ実現、好プログラム~
今回選んだのは共に「よくぞこのようなプログラムを実現してくれた!」と讃えたい2公演。「フォーレ・マラソン」は、室内楽の大家の同分野の全貌を1日で体感する貴重な機会となっただけでなく、それを真の実力者揃いの演奏陣で聴かせた点が賞賛に値する。中でも、北村朋幹、三浦謙司、阪田知樹、ソン・ミンス、秋元孝介と辣腕の個性派が並んだピアノ勢の功績は大きかった。大野&都響もレアな「春」プロの迫真的な好演が光った。
来月のイチオシ
◆◆5月◆◆ 柴田克彦(音楽ライター)選
〈山田和樹&東京芸術劇場 交響都市計画 水野修孝/交響的変容〉
5月10日(日)東京芸術劇場コンサートホール
山田和樹(指揮)/熊木夕茉(ソプラノ)/武藤厚志(ティンパニ)/林英哲(太鼓)/東京混声合唱団、栗友会合唱団/読売日本交響楽団、他
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〈ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団 日本公演〉
5月11日(月)、12日(火)サントリーホール
ラハフ・シャニ(指揮)/チョ・ソンジン(ピアノ)
(5/11)モーツァルト:「後宮からの誘拐」序曲/ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第1番/マーラー:交響曲第1番「巨人」
(5/12)ベートーヴェン:「エグモント」序曲/プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第2番/ブラームス:交響曲第4番
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~「史上最大の交響作品」蘇演~
水野修孝「交響的変容」の選択は、ピカイチと同様の意味合い(=よくぞこの曲を!)も大きいが、「史上最大の交響作品」の蘇演自体が興味津々。東京芸術劇場の芸術監督就任の意気込みを反映した山田和樹渾身の挑戦にぜひ立ち会いたい。ミュンヘン・フィルは、数ある5月の来日オーケストラの代表格。注目の世界的上昇株指揮者の一人シャニが、機能美と重厚さを併せ持つドイツの敏腕楽団をいかにリードするか?に熱視線が注がれる。
先月のピカイチ
◆◆3月◆◆ 池田卓夫(音楽ジャーナリスト)選
〈東京・春・音楽祭2026 合唱の芸術シリーズ vol.13〉
3月25日(水)東京文化会館 大ホール
マレク・ヤノフスキ(指揮)/デイヴィッド・バット・フィリップ(ヴァルデマール王)/カミラ・ニールント(トーヴェ)/ミヒャエル・クプファー=ラデツキー(農夫)/オッカ・フォン・デア・ダメラウ(山鳩)/トーマス・エベンシュタイン(道化師)/アドリアン・エレート(語り手)/東京オペラシンガーズ/NHK交響楽団
シェーンベルク:「グレの歌」
次点 同率2公演
〈びわ湖ホールプロデュースオペラ プッチーニ「トゥーランドット」〉
3月7日(土)滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール 大ホール
阪哲朗(指揮)/粟國淳(演出)/谷明美(トゥーランドット)/宮里直樹(カラフ)/𠮷川日奈子(リュー)/妻屋秀和(ティムール)/大野徹也(アルトゥム)他/びわ湖ホール声楽アンサンブル/京都市交響楽団
〈ふくやま芸術文化ホール オーケストラ福山定期 Vol.12 京都市交響楽団〉
3月22日(日)ふくやま芸術文化ホール リーデンローズ大ホール
沖澤のどか(指揮)/隠岐彩夏(フィオルディリージ)/山下裕賀(ドラベッラ)/糸賀修平(フェランド)/大西宇宙(グリエルモ)/鵜木絵里(デスピーナ)/宮本益光(ドン・アルフォンソ)/京響コーラス
モーツァルト:歌劇「コジ・ファン・トゥッテ」演奏会形式
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~ヤノフスキ、春祭ラスト・ステージで有終の美~
87歳になったヤノフスキは今年いっぱいで指揮者を引退、東京・春・音楽祭でNHK交響楽団と共演するのも「グレの歌」が最後となった。名歌手をずらりと揃え、N響、東京オペラシンガーズとも入魂の演奏を展開、精緻で引き締まった指揮は有終の美を飾るにふさわしい出来栄えだった。次点には大津市と福山市で京都市交響楽団が管弦楽を担ったオペラ2公演を挙げる。沖澤のどかは福島県いわき市でN響を指揮した「レクイエム」(3月15日)でも気を吐き、モーツァルトと向き合う1か月だった。
来月のイチオシ
◆◆5月◆◆ 池田卓夫(音楽ジャーナリスト)選
〈山田和樹&東京芸術劇場 交響都市計画 水野修孝/交響的変容〉
5月10日(日)東京芸術劇場コンサートホール
山田和樹(指揮)/熊木夕茉(ソプラノ)/武藤厚志(ティンパニ)/林英哲(太鼓)/東京混声合唱団、栗友会合唱団/読売日本交響楽団、他
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〈名古屋フィルハーモニー交響楽団 第545回定期演奏会〉
5月15日(金)、16日(土)愛知県芸術劇場コンサートホール
川瀬賢太郎(指揮)
マーラー:交響曲第10番(クック版)
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~山田和樹、音楽監督初のプロジェクトは伝説の超大作~
山田和樹が4月1日付で東京芸術劇場の音楽部門芸術監督に就任した。「いつの頃からか、『大きいことはいいことだ!』という価値観が変容していき、コロナ禍がそれに拍車をかけ、最近では大規模なプロジェクトは本当に少なくなってしまった。だからこそ、人が集うことの原点に帰りたい」と意気込み、演奏時間4時間半に及ぶ水野の「伝説の超大作」を指揮するのは聴き逃せない。好調の川瀬&名フィルのマーラー「第10」クック版ともども、日本の中堅世代の挑戦を楽しむ1か月としたい。
先月のピカイチ
◆◆3月◆◆ 毬沙琳(音楽ジャーナリスト)選
〈東京・春・音楽祭2026 合唱の芸術シリーズ vol.13〉
3月25日(水)東京文化会館 大ホール
マレク・ヤノフスキ(指揮)/デイヴィッド・バット・フィリップ(ヴァルデマール王)/カミラ・ニールント(トーヴェ)/ミヒャエル・クプファー=ラデツキー(農夫)/オッカ・フォン・デア・ダメラウ(山鳩)/トーマス・エベンシュタイン(道化師)/アドリアン・エレート(語り手)/東京オペラシンガーズ/NHK交響楽団
シェーンベルク:「グレの歌」
次点
〈東京都交響楽団 第1038回定期演奏会Aシリーズ〉
3月4日(水)東京文化会館 大ホール
大野和士(指揮)/砂川涼子(ソプラノ)/山下裕賀(メゾ・ソプラノ)/駒形貴之(テノール)/新国立合唱団/東京少年少女合唱隊
アンドレ・プレヴィン:春遠からじ(日本初演)/ドビュッシー:管弦楽のための「映像」より〝春のロンド〟/ブリテン:春の交響曲
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~名匠ヤノフスキ、東京春祭で圧巻のタクト~
期待はしていたが、それを遥かに超えたヤノフスキの「グレの歌」。シェーンベルクが記した調性音楽の極みを大編成の管弦楽と合唱、ソリストの声が、どの瞬間も明晰な響きで聴き手に届く。東京春祭に残した巨匠、数々の名演の締めくくりに相応しい音楽だった。ブリテンの「春の交響曲」は作風も様々な詩人のテキストが多彩な発想で綴られ、大野&都響、渾身の演奏で現代のカンタータを堪能。休館前の東京文化会館で聴けたことに感謝。
来月のイチオシ
◆◆5月◆◆ 毬沙琳(音楽ジャーナリスト)選
〈東京都交響楽団 第1044回定期演奏会Bシリーズ〉
5月21日(木)サントリーホール
ジョン・アダムズ(指揮)/新国立劇場合唱団
ジョン・アダムズ:ナイーヴ・アンド・センティメンタル・ミュージック(日本初演)/アイヴズ:答えのない質問/ジョン・アダムズ:ハルモニウム
次点
〈新国立劇場 マスネ「ウェルテル」〉
5月24日(日)、26日(火)、28日(木)、30日(土)新国立劇場オペラパレス
アンドリー・ユルケヴィチ(指揮)/二コラ・ジョエル(演出)/チャールズ・カストロノーヴォ(ウェルテル)/脇園彩(シャルロット)/須藤慎吾(アルベール)/砂田愛梨(ソフィ)他/新国立劇場合唱団/世田谷ジュニア合唱団/東京フィルハーモニー交響楽団
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~ジョン・アダムズ、新たなる音楽体験に期待~
24年1月に都響を指揮し日本デビューを成功させた世界的作曲家ジョン・アダムズが戻ってくる。ミニマルな楽想が人間味ある響きになり、説得力のあるタクトが印象的だった。今回は合唱が加わるハルモニウム(1980)や日本初演作など、新たな音楽体験ができるだろう。新国立劇場「ウェルテル」は品格ある舞台で人気のプロダクション、注目の脇園彩がシャルロットを歌うということで、物語にどのような陰影がつくのか楽しみだ。
先月のピカイチ
◆◆3月◆◆ 宮嶋 極(音楽ジャーナリスト)
〈東京・春・音楽祭2026 合唱の芸術シリーズ vol.13〉
3月25日(水)東京文化会館 大ホール
マレク・ヤノフスキ(指揮)/デイヴィッド・バット・フィリップ(ヴァルデマール王)/カミラ・ニールント(トーヴェ)/ミヒャエル・クプファー=ラデツキー(農夫)/オッカ・フォン・デア・ダメラウ(山鳩)/トーマス・エベンシュタイン(道化師)/アドリアン・エレート(語り手)/東京オペラシンガーズ/NHK交響楽団
シェーンベルク:「グレの歌」
次点
〈庄司紗矢香&ジャンルカ・カシオーリ デュオ・リサイタル〉
3月6日(金)サントリーホール
庄司紗矢香(ヴァイオリン)/ジャンルカ・カシオーリ(ピアノ)
モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ第24番/ブラームス、ディートリッヒ、シューマン:F・A・E・ソナタイ短調、ダラピッコラ:タルティニアーナ第2番、ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第1番「雨の歌」
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~ヤノフスキとN響の集大成に相応しい名演~
東京春祭において2014年から始まったヤノフスキとN響の共同作業。両者の信頼関係は年を経るごとに深まり、毎年充実の演奏が繰り広げられた。それも今回が最後。ヤノフスキは150人超の大オケと大合唱、独唱陣が織りなす複雑な多声部を厳格にコントロールし、弱音では内声部の隅々まで聴かせ、最強音でも混濁することのない美しい響きを創出。この絶妙なるバランスと起伏に富んだ表現は集大成に相応しい名演だった。両者の共演、もっと聴きたかった。
来月のイチオシ
◆◆5月◆◆ 宮嶋 極(音楽ジャーナリスト)
〈チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団 日本公演〉
5月17日(日)横浜みなとみらいホール/18日(月)、19日(火)サントリーホール/21日(木)すみだトリフォニーホール
パーヴォ・ヤルヴィ(指揮)、反田恭平(ピアノ、18・21日)、ジャニーヌ・ヤンセン(ヴァイオリン、17・19日)
(5/17・19・21日) シューマン:歌劇「ゲノフェーファ」序曲/ブラームス:ヴァイオリン協奏曲 ※17・19日/ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3番 ※21日のみ/チャイコフスキー:交響曲第5番
(5/18) ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3番/ブルックナー:交響曲第4番「ロマンティック」
次点
〈東京交響楽団 第740回定期演奏会/名曲全集第217回〉
5月16日(土)サントリーホール/17日(日)ミューザ川崎シンフォニーホール
ロレンツォ・ヴィオッティ(指揮)
ベートーヴェン:交響曲第1番/マーラー:交響曲第1番「巨人」
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~パーヴォ&名門トーンハレの進化を体感~
創立158年を迎えたスイスの名門オケが19年から音楽監督を務めるパーヴォのもとでどのように進化を遂げたのかを体感する絶好の機会。ヤンセン、反田という進境著しい実力ソリストとの共演も楽しみ。次点は黄金時代を築いたノットの後を受けて音楽監督に就任したヴィオッティの就任披露。レパートリーの柱となるベートーヴェンとマーラーの交響曲第1番という演目もヴィオッティの思いが感じられ、新時代の始まりにぜひ立ち会いたい。










