2026年も年明けから各地で充実の演奏を繰り広げた。そこで今回は1月に開催されたステージからピカイチを、3月に予定されている公演からイチオシを選者の皆さんに紹介していただく。
先月のピカイチ
◆◆1月◆◆ 東条碩夫(音楽評論家)選
〈読売日本交響楽団 第654回定期演奏会〉
1月20日(火)サントリーホール
セバスティアン・ヴァイグレ(指揮)/マグダレーナ・ヒンタードブラー(ソプラノ)/クラウディア・マーンケ(メゾ・ソプラノ)/シュテファン・リューガマー(テノール)/クワンチュル・ユン(バス)/新国立劇場合唱団
プフィッツナー:カンタータ「ドイツ精神について」(日本初演)
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〈大阪フィルハーモニー交響楽団 第594回定期演奏会〉
1月22日(木)フェスティバルホール(大阪)
下野竜也(指揮)/宮本益光(青ひげ)/石橋栄実(ユディット)/田中宗利(吟遊詩人)
小山清茂:管弦楽のための鄙歌(ひなうた)第2番/大栗裕:管弦楽のための「神話」/バルトーク:歌劇「青ひげ公の城」(演奏会形式)
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~ヴァイグレ入魂の指揮で日本初演された「ドイツ精神について」~
プフィッツナーの音楽、ましてこのような大作は、めったに聴けない。よくまあこんな珍しい曲を日本初演してくれたものだということを含め、ヴァイグレの入魂の指揮、読響の瑞々しい演奏などにも敬意を表したい。珍しい曲をという点では、下野と大フィルが演奏した大栗裕と小山清茂の作品も貴重で、充実した快演だった。もちろん「青ひげ公の城」も堂々たる風格の演奏で、宮本益光と石橋栄実の表情豊かな演奏も見事。
来月のイチオシ
◆◆3月◆◆ 東条碩夫(音楽評論家)選
〈国際音楽祭NIPPON 2026 フォーレ室内楽全曲マラソンコンサート〉
3月1日(日)横浜みなとみらいホール11:00、14:00、16:00、19:00の計4回
諏訪内晶子、ベンヤミン・シュミット、金川真弓(いずれもヴァイオリン)/赤坂智子(ヴィオラ)/佐藤晴真(チェロ)/阪田知樹、北村朋幹(ピアノ)他
フォーレ:ヴァイオリン・ソナタ第1・2番、ピアノ四重奏曲第1・2番、ピアノ五重奏曲第1・2番、「夢のあとに」「エレジー」他
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〈京都市交響楽団 第709回定期演奏会〉
3月20日(金祝)京都コンサートホール
沖澤のどか(指揮)/隠岐彩夏(フィオルディリージ)/山下裕賀(ドラベッラ)/糸賀修平(フェランド)/大西宇宙(グリエルモ)/鵜木絵里(デスピーナ)/宮本益光(ドン・アルフォンソ)/京響コーラス
モーツァルト:歌劇「コジ・ファン・トゥッテ」演奏会形式
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~諏訪内晶子&腕利き奏者でフォーレ三昧~
フォーレの室内楽をこれほどまとめていっぺんに、しかもナマで聴けるという機会はあまりないだろう。4部に分けての演奏会で、中心はこの音楽祭の主宰者たる諏訪内晶子、内外の腕利き奏者たちが協演する。一方、京響の「コジ」は、先年、松本の「フィガロの結婚」でモーツァルトのオペラの指揮に名を上げた沖澤のどか。出演歌手たちがまさに粒ぞろいだ。これはふくやま芸術文化ホールでも、3月22日に同一配役で演奏される。
先月のピカイチ
◆◆1月◆◆ 柴田克彦(音楽ライター)選
〈読売日本交響楽団 第654回定期演奏会〉
1月20日(火)サントリーホール
セバスティアン・ヴァイグレ(指揮)/マグダレーナ・ヒンタードブラー(ソプラノ)/クラウディア・マーンケ(メゾ・ソプラノ)/シュテファン・リューガマー(テノール)/クワンチュル・ユン(バス)/新国立劇場合唱団
プフィッツナー:カンタータ「ドイツ精神について」(日本初演)
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〈イザベル・ファウスト 〜無伴奏の夕べ〜〉
1月28日(水)王子ホール
イザベル・ファウスト(ヴァイオリン)
タルティーニ:ヴァイオリン・ソナタ第17番/シャリーノ:6つのカプリースより第2番/イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第4番、他
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~無名の作品による大いなる感銘~
ここに挙げたのは、世にはびこる(と思われる)〝有名曲至上主義〟への疑問を強く感じた2公演。読響は、超レアなプフィッツナーの大作を濃密かつナチュラルに表現し、無名の作品でも共感と誠意を持って奏でれば聴く者に感銘を与え得ることを証明した。加えて真摯で清澄な合唱も印象的だった。ファウストはバッハなしの無伴奏プロを一気に聴かせ、バロックと現代曲の境界線のない「ヴァイオリン芸術」に収斂(しゅうれん)させたのが見事だった。
来月のイチオシ
◆◆3月◆◆ 柴田克彦(音楽ライター)選
〈国際音楽祭NIPPON 2026 フォーレ室内楽全曲マラソンコンサート〉
3月1日(日)横浜みなとみらいホール11:00、14:00、16:00、19:00の計4回
諏訪内晶子、ベンヤミン・シュミット(ヴァイオリン)/葵トリオ、他
フォーレ:ヴァイオリン・ソナタ第1・2番、ピアノ四重奏曲第1・2番、ピアノ五重奏曲第1・2番、「夢のあとに」「エレジー」他
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〈東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団 50周年記念特別演奏会Ⅱ〉
3月31日(火)サントリーホール
高関健(指揮)/森野美咲(ソプラノ)/加納悦子(メゾ・ソプラノ)/東京シティ・フィル・コーア
マーラー:交響曲第2番「復活」
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~室内楽の大家フォーレに浸るマラソンコンサート~
国際音楽祭NIPPONのマラソンコンサートは、まとめて聴く機会が意外に少ない室内楽の大家フォーレの楽曲を続けて味わえる貴重なチャンス。作風の変遷を体感するのも独特の抒情味に浸るのも得難い体験だし、通して聴けば新たな発見を得られる可能性もある。高関&東京シティ・フィルの大作は毎回が聴きもの。特に、スコアの深い読みで曲を一新させる高関が、〝感動強要作〟ともいえる「復活」をいかに表現するか? 興味津々だ。
先月のピカイチ
◆◆1月◆◆ 池田卓夫(音楽ジャーナリスト)選
〈NHK交響楽団 第2056回定期公演Bプログラム〉
1月30日(金)サントリーホール
トゥガン・ソフエフ(指揮)/松田華音(ピアノ)
ムソルグスキー(ショスタコーヴィチ編):歌劇「ホヴァンシチナ」~前奏曲「モスクワ川の夜明け」/ショスタコーヴィチ:ピアノ協奏曲第2番/プロコフィエフ:交響曲第5番
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〈読売日本交響楽団 第654回定期演奏会〉
1月20日(火)サントリーホール
セバスティアン・ヴァイグレ(指揮)/マグダレーナ・ヒンタードブラー(ソプラノ)/クラウディア・マーンケ(メゾ・ソプラノ)/シュテファン・リューガマー(テノール)/クワンチュル・ユン(バス)/新国立劇場合唱団
プフィッツナー:カンタータ「ドイツ精神について」(日本初演)
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~新たな次元に入ったソヒエフとN響~
ソヒエフとN響の演奏は、全く新しい次元に入ったのではないか? 弦楽器は羽のように柔らかい音を重ねながらパワーを増し、管楽器と見事な呼吸をみせる。指揮者は自身の望んだ音を確かめつつ、さらに即興を仕掛けていく。とりわけ見事だったのはB定期後半のプロコフィエフ「交響曲第5番」だった。ヴァイグレと読響はプフィッツナーのカンタータ「ドイツ精神について」という難物を高水準の演奏で音にしてくれた。
来月のイチオシ
◆◆3月◆◆ 池田卓夫(音楽ジャーナリスト)選
〈東京・春・音楽祭2026 合唱の芸術シリーズ vol.13〉
3月25日(水)東京文化会館 大ホール
マレク・ヤノフスキ(指揮)/デイヴィッド・バット・フィリップ(ヴァルデマール王)/カミラ・ニールント(トーヴェ)/ミヒャエル・クプファー=ラデツキー(農夫)/オッカ・フォン・デア・ダメラウ(山鳩)/トーマス・エベンシュタイン(道化師)/アドリアン・エレート(語り手)/東京オペラシンガーズ/NHK交響楽団
シェーンベルク:「グレの歌」
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〈第13回NHK交響楽団いわき定期演奏会〉
3月15日(日)いわき芸術文化交流館アリオス アルパイン大ホール
沖澤のどか(指揮)/松井亜希(ソプラノ)/小泉詠子(メゾ・ソプラノ)/清水徹太郎(テノール)/加耒 徹(バリトン)/いわき市民レクイエム合唱団
モーツァルト:アダージョとフーガK546/プロコフィエフ:古典交響曲/モーツァルト:レクイエム
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~名コンビ、ヤノフスキ&N響で「グレの歌」を~
東京・春・音楽祭の名コンビ、ヤノフスキとN響でシェーンベルクの「グレの歌」が聴ける。高齢にもかかわらず一貫してハードボイルドな指揮が後期ロマン派音楽の爛熟をどう捌くのか、興味は尽きない。福島県いわき市のN響は東日本大震災15周年の特別プログラムで沖澤がモーツァルトの「レクイエム」を指揮する。市民合唱団の指揮には2025年ブザンソン国際指揮者コンクール1位の米田覚士。期せずして新旧優勝者のコラボレーションとなった。
先月のピカイチ
◆◆1月◆◆ 毬沙琳(音楽ジャーナリスト)選
〈読売日本交響楽団 第654回定期演奏会〉
1月20日(火)サントリーホール
セバスティアン・ヴァイグレ(指揮)/マグダレーナ・ヒンタードブラー(ソプラノ)/クラウディア・マーンケ(メゾ・ソプラノ)/シュテファン・リューガマー(テノール)/クワンチュル・ユン(バス)/新国立劇場合唱団
プフィッツナー:カンタータ「ドイツ精神について」(日本初演)
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〈東京都交響楽団 第1034回定期演奏会Aシリーズ〉
1月23日(金)東京文化会館 大ホール
ダニエーレ・ルスティオーニ(指揮)
ヴェルディ:歌劇「運命の力」序曲、歌劇「マクベス」第3幕バレエ音楽/ワーグナー:歌劇「リエンツィ」序曲、歌劇「ローエングリン」第1幕への前奏曲、楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕への前奏曲、他
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~ヴァイグレ渾身の日本初演「ドイツ精神について」~
プフィッツナーの「ドイツ精神について」日本初演は、ドイツの詩人アイヒェンドルフが記した人間味あふれる世界観をヴァイグレ×読響が見事に昇華。ラスト2曲の希望と祈りに満ちた声と管弦楽、全体を包み込むロマンティックな音楽に心を奪われた。
4月から都響の首席客演指揮者となるルスティオーニ、ヴェルディの明快な棒さばきとワーグナーでの繊細にモチーフを重ねていく音楽の幅の広さが秀逸、今後のプログラムに期待したい。
来月のイチオシ
◆◆3月◆◆ 毬沙琳(音楽ジャーナリスト)選
〈東京・春・音楽祭2026 合唱の芸術シリーズ vol.13〉
3月25日(水)東京文化会館 大ホール
マレク・ヤノフスキ(指揮)/デイヴィッド・バット・フィリップ(ヴァルデマール王)/カミラ・ニールント(トーヴェ)/ミヒャエル・クプファー=ラデツキー(農夫)/オッカ・フォン・デア・ダメラウ(山鳩)/トーマス・エベンシュタイン(道化師)/アドリアン・エレート(語り手)/東京オペラシンガーズ/NHK交響楽団
シェーンベルク:「グレの歌」
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〈東京都交響楽団 第1038回定期演奏会Aシリーズ〉
3月4日(水)東京文化会館 大ホール
大野和士(指揮)/砂川涼子(ソプラノ)/山下裕賀(メゾ・ソプラノ)/駒形貴之(テノール)/新国立合唱団/東京少年少女合唱隊
アンドレ・プレヴィン:春遠からじ(日本初演)/ドビュッシー:管弦楽のための「映像」より〝春のロンド〟/ブリテン:春の交響曲
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~東京文化会館で聴く2つの20世紀声楽曲~
東京春祭でワーグナーの名演を重ねてきたヤノフスキとN響、今年は「グレの歌」1公演のみとなる。精緻で濃密なシェーンベルクの超大作を巨匠ヤノフスキとニールント他名歌手たちがどのように表現するか。エレートの語り手も楽しみ。
ブリテンの記念イヤーに自然と人間の生命力を歌い上げる「春の交響曲」は大野と都響のコンビネーションに期待。5月から改修のため長期休館する東京文化会館に奇しくも合唱と管弦楽の大作が揃った。
先月のピカイチ
◆◆1月◆◆ 宮嶋 極(音楽ジャーナリスト)
〈NHK交響楽団 第2054回定期公演 Aプログラム〉
1月17日(土)NHKホール
トゥガン・ソヒエフ(指揮)
マーラー:交響曲第6番「悲劇的」
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〈東京都交響楽団 第1034回定期演奏会Aシリーズ〉
1月23日(金)東京文化会館 大ホール
ダニエーレ・ルスティオーニ(指揮)
ヴェルディ:歌劇「運命の力」序曲、歌劇「マクベス」第3幕バレエ音楽/ワーグナー:歌劇「リエンツィ」序曲、歌劇「ローエングリン」第1幕への前奏曲、楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕への前奏曲、他
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~ソヒエフの非凡な解釈によるマーラー6番~
ピカイチはソヒエフが登場したN響A定期のマーラー6番。隅々にまで指揮者の意図が浸透していることが伝わってくるち密かつ濃密な演奏。ソヒエフならではの非凡な解釈も新鮮な感動を覚えた。詳細は速リポ(トゥガン・ソヒエフ指揮 NHK交響楽団 第2054回 定期公演Aプログラム | CLASSICNAVI)の拙稿をご覧ください。次点は都響の次期首席客演指揮者ルスティオーニ指揮による同響定期。ヴェルディとワーグナーのオペラ管弦楽作品を集めた演目。彼のオケ操縦の巧みさと楽曲解釈のセンスが光る好演だった。
来月のイチオシ
◆◆3月◆◆ 宮嶋 極(音楽ジャーナリスト)
〈東京・春・音楽祭2026 合唱の芸術シリーズ vol.13〉
3月25日(水)東京文化会館 大ホール
マレク・ヤノフスキ(指揮)/デイヴィッド・バット・フィリップ(ヴァルデマール王)/カミラ・ニールント(トーヴェ)/ミヒャエル・クプファー=ラデツキー(農夫)/オッカ・フォン・デア・ダメラウ(山鳩)/トーマス・エベンシュタイン(道化師)/アドリアン・エレート(語り手)/東京オペラシンガーズ/NHK交響楽団
シェーンベルク:「グレの歌」
次点
〈京都市交響楽団 第709回定期演奏会〉
3月20日(金祝)京都コンサートホール
沖澤のどか(指揮)/隠岐彩夏(フィオルディリージ)/山下裕賀(ドラベッラ)/糸賀修平(フェランド)/大西宇宙(グリエルモ)/鵜木絵里(デスピーナ)/宮本益光(ドン・アルフォンソ)/京響コーラス
モーツァルト:歌劇「コジ・ファン・トゥッテ」演奏会形式
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~「グレの歌」の真価に迫るヤノフスキ指揮N響~
シェーンベルクが作曲にあたって53段の楽譜を用意したことでも知られる巨大編成のオケに6人の独唱と複数パートの大合唱を要する「グレの歌」。その編成ゆえに日本では演奏機会は少ないが、ヤノフスキ指揮N響で聴けるのはまたとないチャンス。ヤノフスキの引き締まった音作りによってこの複雑な作品の真価に迫ることができそう。次点は沖澤&京響による「コジ…」演奏会形式。彼女の現代的センスにあふれたモーツァルトに期待。










