マーラーの壮大な設計図を現代に再現! 新鮮な驚きをもたらした快演
円熟を迎えた高関健の身上は、定評ある緻密なスコア研究とオーケストラ・ビルダーの腕前にある。常任指揮者11年目を終えた東京シティ・フィルの創立50周年記念特別演奏会でのマーラーは、それらと高関へ献身的に寄り添う楽団の努力が昇華した快演となった。2月の第6番「悲劇的」に続いて、第2番「復活」が聴衆の好奇心をいたく刺激した。
楽譜に凝る高関のこと、「復活」では国際マーラー協会の主導による新全集版の校訂にかかわり、さまざまなヒントを得た。今回はマーラー自身が1907年と1910年の実演で使い、その書き込みがあるスコアを見て勉強し直した、とプレトークで説明。「記入されている通りに振る。全部マーラーがやったことです」と宣言した。
つまり高関の念頭にはマーラーを同業者=指揮者の偉大な先達としてリスペクトし、その意図が封じ込められた壮大な設計図(楽譜)を、彼なりのやり方で現代に再現したい、という意識があったことになる。したがって演奏には、聴いたことのないディテールやバランス、フレージング、そして臨時の奏者増強などが頻出して、新鮮な驚きで満たされた。しかも第1楽章と2楽章の間で「最低5分の休みをおく」というスコアの指示通り、20分の休憩を敢行する徹底ぶりだった。
第1楽章冒頭のコントラバスによる第1主題から、たたみ込む末尾など耳慣れないディテールが顕著。対旋律のホルンを厚くしたり、弦にポルタメントを用いたり、仕掛けの情報量が多い。緩徐楽章では、たっぷりとした叙情性が際立つ。独唱は下手の中央部、ホルンの前に置き、第4楽章はじめのコラールでは金管・木管を舞台正面、合唱席の後方に立たせた。終楽章ではティンパニやシンバルを増員して、響きのインパクトを強めた。
これらが、どこまで作曲者の指示によるものなのか、高関自身の解釈によるのか、判断はしにくい。マーラーは演奏効果を高めようと、古典作品の編曲を手がけたことで知られる。自作でも同様に心を砕いて、指揮者=作曲家の面目躍如だったことが実際に音で確認できたのは興味深い。同フィルの通常規模を超える大編成には臨時の奏者が多く、思わぬ粗もあったが、ある意味でオーセンティックな再創造に一石を投じた趣向には価値があった。
在京オーケストラの勢力図は刻々と変わる。惰性に陥ったトップ層を脅かす存在として、高関&東京シティ・フィルの快進撃は、もっと注目されていい。
(深瀬満)
公演データ
東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団 50周年記念特別演奏会
3月31日(火) 19:00サントリーホール 大ホール
指揮:高関健
ソプラノ:森野美咲
メゾソプラノ:加納悦子
合唱:東京シティ・フィル・コーア(合唱指揮:藤丸崇浩)
管弦楽:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
コンサートマスター:戸澤哲夫
プログラム
マーラー:交響曲第2番 ハ短調 「復活」
ふかせ・みちる
音楽ジャーナリスト。早大卒。一般紙の音楽担当記者を経て、広く書き手として活動。音楽界やアーティストの動向を追いかける。専門誌やウェブ・メディア、CDのライナーノート等に寄稿。ディスク評やオーディオ評論も手がける。










