佐渡裕指揮 新日本フィルハーモニー交響楽団 第668回定期演奏会

佐渡裕が新日本フィルの音楽監督3シーズン目を充実のマーラー演奏で締め括る

佐渡裕の新日本フィルハーモニー交響楽団音楽監督としての3シーズン目の締め括りは、マーラーの交響曲第6番「悲劇的」。佐渡にとっては、1989年のブザンソン国際指揮者コンクール優勝のあと、1990年9月の新日本フィル定期演奏会デビューで取り上げたゆかりの深い曲であり、レナード・バーンスタインのアシスタントをしていたときに巨匠から直伝されたレパートリーでもある。

第668回定期演奏会のプログラムは、佐渡裕とゆかりの深いマーラーの交響曲第6番「悲劇的」 ※写真は3月21日(土)すみだトリフォニーホールで行われた同内容公演より(C)TERASHI Masahiko
第668回定期演奏会のプログラムは、佐渡裕とゆかりの深いマーラーの交響曲第6番「悲劇的」 ※写真は3月21日(土)すみだトリフォニーホールで行われた同内容公演より(C)TERASHI Masahiko

第1楽章冒頭から、オーケストラが気合いの入ったビートを刻む。第2主題は、艶のあるヴァイオリンが密度濃くたっぷりと歌う。この日の佐渡は、しばしば大胆なテンポの変化があり、速い音楽では快適に進み、ゆったりとした場面では間合いをとった。第2楽章はスケルツォ。木琴など打楽器の強調で色彩が際立つ。そして第3楽章がアンダンテ。佐渡は情感をこめてゆっくりと始める。オーボエ(岡北斗)やクラリネット(マルコス・ペレス・ミランダ)の気持ちの入ったソロが心を打つ。そして楽章の終盤で、佐渡はテンポを落としてまさにたっぷりと歌った。第4楽章は起伏に富み、ドラマティック。と同時に細かな音符まで大切に奏でる。通常、ハンマーの打撃は2度であるが、佐渡は作曲者によって取り消された3度目も再現し、衝撃に追い打ちをかけた。

ハンマーの打撃は3度。衝撃に追い打ちをかけた ※写真は3月21日(土)すみだトリフォニーホールで行われた同内容公演より(C)TERASHI Masahiko
ハンマーの打撃は3度。衝撃に追い打ちをかけた ※写真は3月21日(土)すみだトリフォニーホールで行われた同内容公演より(C)TERASHI Masahiko

トランペット首席の山川永太郎、ホルン首席の山田圭祐、新入団のトロンボーン首席の櫻井俊らをはじめとする金管楽器陣が好調。新日本フィルは、もともと、小澤征爾、井上道義、クリスティアン・アルミンク、ダニエル・ハーディングらの指揮者により、マーラー演奏に伝統のあるオーケストラであるが、近年、若い優秀な奏者の入団により、新日本フィルが新しい時代を迎えていることを実感する。佐渡裕音楽監督の3シーズン目は、充実のマーラー演奏で結ばれた。

(山田治生)

新日本フィルの新たな時代の到来を感じさせる、充実のマーラー演奏だった ※写真は3月21日(土)すみだトリフォニーホールで行われた同内容公演より(C)TERASHI Masahiko
新日本フィルの新たな時代の到来を感じさせる、充実のマーラー演奏だった ※写真は3月21日(土)すみだトリフォニーホールで行われた同内容公演より(C)TERASHI Masahiko

公演データ

新日本フィルハーモニー交響楽団 第668回定期演奏会

3月22日(日) 14:00サントリーホール 大ホール

指揮:佐渡 裕
管弦楽:新日本フィルハーモニー交響楽団
コンサートマスター:崔 文洙

プログラム
マーラー:交響曲第6番 イ短調「悲劇的」

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山田 治生

やまだ・はるお

音楽評論家。1964年、京都市生まれ。87年、慶応義塾大学経済学部卒業。90年から音楽に関する執筆を行っている。著書に、小澤征爾の評伝である「音楽の旅人」「トスカニーニ」「いまどきのクラシック音楽の愉しみ方」、編著書に「オペラガイド130選」「戦後のオペラ」「バロック・オペラ」などがある。

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