デイヴィッド・レイランド指揮 大阪フィルハーモニー交響楽団 第596回定期演奏会

レイランド得意のプログラムで求心力のある演奏を聴かせる

2026年はシューマンの没後170年、モーツァルトの生誕270年に当たる節目の年。大阪フィルの第596回定期演奏会は、そんな両者の作品から、シューマンは交響曲第2番、モーツァルトはレクイエムが取り上げられた。指揮はベルギー出身で、近年は霧島国際音楽祭の指揮者を3年連続で務めるなど、日本での活躍もめざましいデイヴィッド・レイランド。大阪フィルとは約3年ぶりの共演という。

デイヴィッド・レイランドが2023年の初共演以来、大阪フィルに再登場した 提供:大阪フィルハーモニー交響楽団
デイヴィッド・レイランドが2023年の初共演以来、大阪フィルに再登場した 提供:大阪フィルハーモニー交響楽団

前半のシューマンの交響曲第2番は、レイランドにとって、日本でも公演経験のある作品。
それだけに、たとえばアクセント1つ、またクレッシェンドやデクレッシェンドの持っていき方やフレーズの行方など、細部までイメージが明確で、なおかつ、そのイメージを、丁寧な音楽づくりによってオケのメンバー全員としっかり共有できているのだろう。結果として、集中力の高い、迷いのない音運びとなり、ぐいぐいと聴く者の心を引き込む演奏になっていた。なかでも印象的だったのは、第3楽章。メリハリの効いた躍動感あふれる第1楽章、第2楽章の後で切々と歌い上げられた緩徐楽章は、深い悲しみを湛えながらも、大阪フィルの弦のあたたかな響きによるのだろう。悲愴感というより、祈りにも似た感覚を個人的におぼえた。

モーツァルト「レクイエム」 提供:大阪フィルハーモニー交響楽団
モーツァルト「レクイエム」 提供:大阪フィルハーモニー交響楽団

後半は、やはりレイランドが得意とする作曲家というモーツァルトのレクイエム。前半に続いて集中力の高さが保たれた演奏で、各曲の個性が明確に描き分けられた。特筆すべきは、休符、つまり、間の雄弁さ。さまざまなフレーズの最後に出現する、引き締まった生きた間は、そこに至る歌わせ方や音楽の方向性、音のエネルギーの積み重ねがたしかなものであることを証明しているようだった。全14曲の最後の音が鳴り止んだ瞬間も深い余韻に包まれ、レイランドも黙祷するようにそのまま静止。場内はしばし静寂に包まれた。今回の演奏では、第8曲のラクリモサの終了後でもやや長い間が取られ、2部構成のような進め方になっていたとともに、その間がやはり黙祷のようにも感じられ、改めて、この曲が死者のために捧げられるミサ曲であることを思い起こさせた。ソリストの4人も、最初は力みや硬さも感じられたが、曲が進むごとに本領を発揮。合唱も豊かな響きで聴き応えのある演奏を聴かせてくれた。
充実したプログラムと終始求心力のある演奏で、あっという間の2時間となった。

(堀内みさ)

ソリスト、合唱ともに豊かな響きで聴き応えのある演奏だった 提供:大阪フィルハーモニー交響楽団
ソリスト、合唱ともに豊かな響きで聴き応えのある演奏だった 提供:大阪フィルハーモニー交響楽団

公演データ

大阪フィルハーモニー交響楽団 第596回定期演奏会

3月5日(木)19:00フェスティバルホール(大阪)

指揮:デイヴィッド・レイランド
ソプラノ:七澤 結
メゾ・ソプラノ:小泉詠子
テノール:糸賀修平
バス:加藤宏隆
合唱:大阪フィルハーモニー合唱団(合唱指導:福島章恭)
管弦楽:大阪フィルハーモニー交響楽団
コンサートマスター:崔 文洙

プログラム
シューマン:交響曲 第2番 ハ長調 Op.61
モーツァルト:レクイエム ニ短調 K.626

他日公演
3月6日(金)19:00フェスティバルホール(大阪)

 

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堀内 みさ

ほりうち・みさ

音楽ライター。文筆家。20代から30代にかけて、毎年1カ月ほどバックパッカーでヨーロッパを旅し、主に立ち見でコンサートを聴きまくっているうちに、気がつけば物書きに。モットーはフィールドワークで、作曲家ゆかりの地を巡る連載なども担当。著書に「ショパン紀行」(東京書籍)「ブラームス『音楽の森へ』」(世界文化社)など。日本の音楽や伝統文化についての執筆を行う一面も。

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