尾高忠明指揮 大阪フィルハーモニー交響楽団 ザ・シンフォニーホール特別演奏会 ベートーヴェン・チクルス~原点にして頂点Ⅳ

尾高忠明と大阪フィルが奏でた真摯にして端正なベートーヴェン

昨年9月にスタートした音楽監督・尾高忠明の指揮による大阪フィルハーモニー交響楽団のベートーヴェン交響曲チクルス。その第4弾となる第8番、第7番(演奏順)を聴いた。
前半の第8番は弦楽器が12・10・8・6・6のいわゆる12型にコントラバスを1プルト増やして低音を増強した編成。ドイツ音楽らしくハーモニーを支える重心の低い響きを作り出そうとの尾高の考え方が表れていた。

尾高忠明指揮 大阪フィルハーモニー交響楽団 ベートーヴェン・チクルスⅣ
尾高忠明指揮 大阪フィルハーモニー交響楽団 ベートーヴェン・チクルスⅣ

全体に中庸なテンポ設定でじっくりと音楽を進めていく。弦楽器の編成を絞ってはいるものの、最近流行のピリオド奏法の要素を取り入れたスタイルではなく、弦にヴィブラートを適度にかけてオケ全体を豊かに鳴らしていく。
第1楽章はソナタ形式の造形美をカッチリとした組み立てで、主題提示部を繰り返した。第2楽章も最近流行の高速テンポではなく、落ちついた雰囲気の中で各旋律のニュアンスを繊細に表現。第3楽章メヌエットの中間部、チェロのトップに支えられたホルンのソロも雄弁な出来であった。終楽章はやや速めのテンポを採用したが、勢いに任せて突っ走ることなく堂々たるフィナーレを作り出した。

後半の第7番は弦楽器を14型に増やしての演奏。大阪フィルをザ・シンフォニーホールで聴くのは久しぶりであったが、各パートの解像度が高く、管楽器のソロイスティックな表現が際立って聴こえてくる。冒頭のオーボエのソロから木管各パートとホルンのトップは安定感のある演奏を次々と披露し、尾高体制になって間もなく8年となる大阪フィルの充実ぶりが窺えた。
演奏全体の構えは第8番と同じく、地にしっかりと根差した堂々たるアプローチで、「原点にして頂点」との同チクルスのテーマを体現するものであった。第1楽章と第4楽章はいずれも提示部を繰り返した。流行にとらわれることなく、尾高が長いキャリアの中で培ってきた確信に満ちた解釈に全幅の信頼を寄せた大阪フィル・メンバーが熱演で応えるさまは聴衆の心を打つものであった。

終演後、盛大な喝采に応えて尾高は客席に向かって「やっと8番まで来ました。ロリン・マゼールが初めて挑戦したそうですが、1日でベートーヴェンの交響曲全曲を一挙に演奏するというコンサートがありますが、私はやりません」との趣旨のことを語り、ベートーヴェンの演奏には気力や集中力に加えて体力も必要との考えを滲ませた。
なお、同チクルス最終回の公演は交響曲第9番で、2月23日に同ホールで行われる。さらに来月17日にはサントリーホールで東京定期公演も開催される。こちらは尾高が近年力を入れているエルガーの交響曲第3番などオール・エルガー・プログラムが予定されている。

(宮嶋 極)

公演データ

大阪フィルハーモニー交響楽団 ザ・シンフォニーホール特別演奏会
ベートーヴェン・チクルス~原点にして頂点Ⅳ

1月28日(水)19:00 ザ・シンフォニーホール(大阪)

指揮:尾高 忠明
管弦楽:大阪フィルハーモニー交響楽団
コンサートマスター:崔 文洙

プログラム
ベートーヴェン:交響曲 第8番ヘ長調Op.93
       :交響曲 第7番イ長調Op.92

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宮嶋 極

みやじま・きわみ

放送番組・映像制作会社である毎日映画社に勤務する傍ら音楽ジャーナリストとしても活動。オーケストラ、ドイツ・オペラの分野を重点に取材を展開。中でもワーグナー作品上演の総本山といわれるドイツ・バイロイト音楽祭には2000年代以降、ほぼ毎年訪れるなどして公演のみならずバックステージの情報収集にも力を入れている。

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