久石譲指揮 ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団 スペシャルツアー2025 オーケストラコンサート

精彩に富むロイヤル・フィルの〝色〟が作品を雄弁に輝かせる

人気作曲家・久石譲が指揮するロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団の公演。今回はソウル2公演とサントリーホール2公演が開催され、最終日の東京2公演目に足を運んだ。プログラムはオール自作でミニマル系の楽曲が中心。「Metaphysica(交響曲第3番)」、ハープ・コンチェルト(日本初演)、交響組曲「The Boy and the Heron(君たちはどう生きるか)」for Piano and Orchestra(日本初演)の3曲が披露された。

久石譲が指揮台に立ち、オール自作曲をロイヤル・フィルとともに披露した ※写真は7月24日(木)の同内容公演より
久石譲が指揮台に立ち、オール自作曲をロイヤル・フィルとともに披露した ※写真は7月24日(木)の同内容公演より

久石は、2024年からコンポーザー・イン・アソシエーションを務め、CD「A Symphonic Celebration」をドイツ・グラモフォンに録音し、来月ロンドンのプロムスでも共演するなど、英国5大楽団の一角ロイヤル・フィルと深い関係を築いている。本日もそうした互いのリスペクトを感じさせる温かくも意欲的な演奏が展開された。

「Metaphysica」は新日本フィル創立50周年記念委嘱作。ここは、細かな動き、複雑なリズム、力強い場面の全てに有機性が保たれていた点が素晴らしい。また豊潤な弦楽器陣が魅せた第2楽章の美しいメロディも印象深い。

ハープ・コンチェルトは海外4団体の共同委嘱作。ロサンゼルス・フィルのハープ奏者エマニュエル・セイソンが演奏する前提で書かれており、今回も彼が独奏を務めた。曲は、ハープの優雅なイメージとは違って、「激しく、荒々しく、躍動的な」(久石)音楽。実際、セイソンのソロは強く明瞭で動的だ。ゆえに終始濃密かつ活力十分。加えてバックのオケにも置かれたハープがサウンド的な妙味を醸し出す。

「ハープ・コンチェルト」では、ロサンゼルス・フィルのハープ奏者エマニュエル・セイソンがソリストを務めた ※写真は7月24日(木)の同内容公演より
「ハープ・コンチェルト」では、ロサンゼルス・フィルのハープ奏者エマニュエル・セイソンがソリストを務めた ※写真は7月24日(木)の同内容公演より

「The Boy and the Heron」は宮崎駿氏制作の映画音楽を再構成した作品。ここも、味のある久石のピアノはもちろん、音楽全体が実に多彩で生き生きしている。アンコールのジブリ・ソング2曲も素敵な贈り物。最後はスタンディング・オベーションが会場を包んだ。

今回精彩をもたらしたのは、ロイヤル・フィルの持つ〝色〟であろう。彼らが放つ様々な色合いや温度感が各作品を雄弁に輝かせた。
(柴田克彦)

久石は、ロイヤル・フィルとともに多彩で生き生きとした音楽を聴かせた ※写真は7月24日(木)の同内容公演より
久石は、ロイヤル・フィルとともに多彩で生き生きとした音楽を聴かせた ※写真は7月24日(木)の同内容公演より

公演データ

久石譲指揮 ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団 
スペシャルツアー2025 オーケストラコンサート

7月25日(金) 19:00サントリーホール 大ホール

指揮:久石譲
ハープ:エマニュエル・セイソン
管弦楽:ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団

プログラム
久石譲:Metaphysica(交響曲第3番)
久石譲:ハープ・コンチェルト ※日本初演
久石譲:The Boy and the Heron for Piano and Orchestra ※日本初演

アンコール
久石譲:One Summer’s Day (for Piano and Harp) (映画「千と千尋の神隠し」より)
久石譲:人生のメリーゴーランド(映画「ハウルの動く城」より)

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柴田克彦

しばた・かつひこ

音楽マネジメント勤務を経て、フリーの音楽ライター、評論家、編集者となる。「ぶらあぼ」「ぴあクラシック」「音楽の友」「モーストリー・クラシック」等の雑誌、「毎日新聞クラシックナビ」等のWeb媒体、公演プログラム、CDブックレットへの寄稿、プログラムや冊子の編集、講演や講座など、クラシック音楽をフィールドに幅広く活動。アーティストへのインタビューも多数行っている。著書に「山本直純と小澤征爾」(朝日新書)。

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