久石譲指揮 新日本フィルハーモニー交響楽団 第661回定期演奏会

色彩にあふれたメシアン「トゥーランガリラ交響曲」

新日本フィルハーモニー交響楽団のMusic Partnerを務める久石譲が登壇し、メシアンの「トゥーランガリラ交響曲」を取り上げた。ピアノ独奏は角野隼斗、オンド・マルトノ独奏は原田節。

久石譲指揮、メシアンのトゥーランガリラ交響曲。ピアノ独奏は角野隼斗、オンド・マルトノ独奏は原田節が務めた ©TERASHI Masahiko
久石譲指揮、メシアンのトゥーランガリラ交響曲。ピアノ独奏は角野隼斗、オンド・マルトノ独奏は原田節が務めた ©TERASHI Masahiko

これまでに久石の指揮するベートーヴェンやブラームスの交響曲、ストラヴィンスキー「春の祭典」、ライヒの「砂漠の音楽」などを聴いてきたが、それらのときと同じように今回も、久石は作曲家の視点から「トゥーランガリラ交響曲」を再現しているように思われた。過剰な自己主張やオーケストラに対する煽(あお)りはなく、自分が楽譜をどう読解したかを演奏として示すことに主眼が置かれているように感じられた。それゆえ、音楽は明晰(めいせき)で、様々な楽器が聴こえ、これまで聴こえてこなかったような声部を耳にすることもできた。また、作曲家の視点ゆえにクールに描いているというわけではなく、「愛の歌」には抒情性があったし、第5楽章「星たちの血の喜び」は、楽しげで、推進力があり、同時にしゃれてもいた。第6楽章「愛の眠りの園」はまったりとしていても音楽は滞らず、第8楽章「愛の展開」は、ときに熱く、ときに気持ちいい音楽となっていた。

角野のピアノは、洗練されたクリスタルな音色。積極的に見せ場を作るシーンもある。彼もまた、ピアニストとしての表現をしようというよりも、クリエイターの視点から演奏に参加しているように感じられた。楽曲を熟知した原田のオンド・マルトノは、今日もたっぷりと歌ってみせた。

角野は洗練されたクリスタルなピアノの音色を聴かせ、原田のオンド・マルトノはたっぷりと歌っていた ©TERASHI Masahiko
角野は洗練されたクリスタルなピアノの音色を聴かせ、原田のオンド・マルトノはたっぷりと歌っていた ©TERASHI Masahiko

新日本フィルは、管楽器に安定感があり、全体として色彩にあふれていた。特に「フィナーレ」がカラフルで素晴らしかった。久石譲との今後のコラボレーションがますます楽しみである。

アンコールに、角野と原田が二人でメシアンの「未刊の音楽帖」第1曲を弾いた。
(山田治生)

公演データ

新日本フィルハーモニー交響楽団 第661回定期演奏会

3月22日(土)14:00サントリーホール

指揮:久石 譲
ピアノ:角野隼斗
オンド・マルトノ:原田節
管弦楽:新日本フィルハーモニー交響楽団

プログラム
メシアン:トゥーランガリラ交響曲

アンコール
メシアン:未刊の音楽帖 第1曲

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山田 治生

やまだ・はるお

音楽評論家。1964年、京都市生まれ。87年、慶応義塾大学経済学部卒業。90年から音楽に関する執筆を行っている。著書に、小澤征爾の評伝である「音楽の旅人」「トスカニーニ」「いまどきのクラシック音楽の愉しみ方」、編著書に「オペラガイド130選」「戦後のオペラ」「バロック・オペラ」などがある。

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