ペトル・ポペルカ指揮 プラハ放送交響楽団 東京公演 2日目

ポペルカとプラハ放送響の質感や語感が良き融合を果たした快演

注目度急上昇の首席指揮者ペトル・ポペルカが率いるプラハ放送交響楽団の東京2公演目。ドヴォルザークのチェロ協奏曲(独奏:佐藤晴真)に、スメタナの「わが祖国」から「モルダウ」を除く5曲と、かなりユニークなプログラムだ。

ユニークなプログラムを披露した指揮者のペトル・ポペルカとプラハ放送響
ユニークなプログラムを披露した指揮者のペトル・ポペルカとプラハ放送響

佐藤は、豪放に鳴らし壮大に歌い上げるよりも、端正でノーブルな表現を旨とするタイプ。今回のドヴォルザークも端正かつ芳醇なソロを奏で、的確・緻密なポペルカのタクトと共に、曲が有する〝チェロ独奏を伴うオーケストラ曲〟としての特長を明示した。中でも、じっくりと奏された第2楽章が、木管楽器の表情豊かなソロと相まって、胸に染みる美演。全曲最後の遅い部分のデリケートなニュアンスも光っていた。

端正かつ芳醇なソロを奏でたチェロの佐藤晴真(C)Seiichi Saito
端正かつ芳醇なソロを奏でたチェロの佐藤晴真(C)Seiichi Saito

「わが祖国」は、ポペルカのドラマティックな構築や洗練味、オーケストラの楽曲へのシンパシー、両者の地元音楽家のみ表現可能な質感や語感が良き融合を果たした快演。こまやかな「ヴィシェフラド」、劇的迫力と場面転換の妙で魅せた「シャールカ」、高密度かつ高濃度の音で迫真的に畳みかけた「ターボル」〜「ブラニーク」など、終始耳を惹きつけられた。

「モルダウ」を除いたことで生まれる劇的トーンの維持も新鮮だったが、アンコールはその「モルダウ」。結局「わが祖国」全曲が披露され、2時間30分超えの長いコンサートとなった。

ホールによっては弦楽器の薄さや金管楽器の平板さが気になりそうなプラハ放送響だが、東京オペラシティならば十分な響き。これはホールを味方につけての好演だったとも言えるだろう。
(柴田克彦)

公演データ

プラハ放送交響楽団 東京公演
7月13日 (土) 14:00 東京オペラシティ コンサートホール

指揮:ペトル・ポペルカ
チェロ:佐藤晴真
管弦楽:プラハ放送交響楽団

プログラム
ドヴォルザーク:チェロ協奏曲 ロ短調 Op.104
スメタナ:連作交響詩「わが祖国」より〝ヴィシェフラド〟〝シャールカ〟〝ボヘミアの森と草原から〟〝ターボル〟〝ブラニーク〟

ソリスト・アンコール
カザルス(カタロニア民謡):鳥の歌

オーケストラ・アンコール
スメタナ:「わが祖国」より第2曲〝モルダウ〟

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柴田克彦

しばた・かつひこ

音楽マネジメント勤務を経て、フリーの音楽ライター、評論家、編集者となる。「ぶらあぼ」「ぴあクラシック」「音楽の友」「モーストリー・クラシック」等の雑誌、「毎日新聞クラシックナビ」等のWeb媒体、公演プログラム、CDブックレットへの寄稿、プログラムや冊子の編集、講演や講座など、クラシック音楽をフィールドに幅広く活動。アーティストへのインタビューも多数行っている。著書に「山本直純と小澤征爾」(朝日新書)。

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