高関健指揮、NHK交響楽団定期公演Cプログラム

NHK交響楽団の10月定期公演は多くのファンが待ち望んでいた桂冠名誉指揮者ヘルベルト・ブロムシュテットの来日が実現せず、Aプロ(14、15日)は中止に、Cプロ(20、21日)は高関健に、Bプロ(25、26日)は尾高忠明に指揮者が交代し予定されていたのと同じ曲目で開催されることになった。

ブロムシュテットの来日中止に伴い指揮者の変更などを伝えるNHKホールの掲示板
ブロムシュテットの来日中止に伴い指揮者の変更などを伝えるNHKホールの掲示板

そのCプロ初日。ニルセンの「アラジン組曲」から4曲、シベリウスの交響曲第2番という北欧プロ。結論からいうと高関は急な登板だったにもかかわらず持ち前の緻密な音楽作りでN響の底力を引き出して〝ピンチヒッター〟の役割を十分に果たしていた。

 

アラジン組曲は北欧作品の魅力を紹介することに力を入れていたブロムシュテットらしい選曲。日本では実演の機会は少なく、高関のSNSによると彼も演奏経験がなかったそうだ。それでもオリエンタルな音色感をうまく醸成し、聴衆に分かりやすく聴かせることができたように感じた。

 

メインのシベリウスは譜面の徹底研究に注力している高関だけに自らのパート譜を使用(高関のSNSより)しての演奏。譜面を実直に実際の音楽にしていこうとの高関の姿勢には共感する点が多々ある。その一方で少し気なったのは曲の最初から最後まで常に右手で拍子を刻み続け、左手で管・打楽器に頻繁にキューを出していたことだ。N響相手にそこまで生まじめに拍を取らなくても…、と筆者には映ったのである。

終演後、喝采に応える高関健と篠崎コンマスをはじめとするN響メンバー
終演後、喝采に応える高関健と篠崎コンマスをはじめとするN響メンバー

それでも音楽が小まとまりになることなくスケール感を創出できたのは、高関の実力でもあるがこの日、コンマスを務めた篠崎史紀の存在も大きかったのではないだろうか。篠崎は普段にも増して大きな身振りとボウイングでオケ全体をリードして音楽に雄大な流れを生み出し、高いテンションを維持するのに一定の役割を果たしていたからだ。百戦錬磨の篠崎の矜持(きょうじ)を感じさせる見事なコンマスぶりであった。なお、ブロムシュテットは来年秋の来日が予定されており、本人も意欲を示しているという。体調を回復させ再び元気な姿を見せてくれることを願うばかりである。
(宮嶋 極)

公演データ

【NHK交響楽団10月定期公演Cプログラム】

10月20日(金)19:30、21日(土) NHKホール

指揮:高関 健

ニルセン:アラジン組曲Op.34 ~「祝祭行進曲」「ヒンドゥーの踊り」「イスファハンの市場」「黒人の踊り」
シベリウス:交響曲第2番ニ長調Op.43

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宮嶋 極

みやじま・きわみ

放送番組・映像制作会社である毎日映画社に勤務する傍ら音楽ジャーナリストとしても活動。オーケストラ、ドイツ・オペラの分野を重点に取材を展開。中でもワーグナー作品上演の総本山といわれるドイツ・バイロイト音楽祭には2000年代以降、ほぼ毎年訪れるなどして公演のみならずバックステージの情報収集にも力を入れている。

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