進化し続ける名手たちによるロマン派2大協奏曲を堪能
「究極の協奏曲コンサート」と銘打って、全国8都市で開催されるツアーの初日を聴いた。人気奏者たちのヴィルトゥオジティ(名技性)と熟練の指揮者+オーケストラとが繰り広げる多彩な魅力を味わえるだけに、大勢のお客さんが集まり場内はほぼ満席。
前半は三浦文彰ソロによるチャイコフスキー。近年の三浦といえば宮崎国際音楽祭の音楽監督を務めるなど自身の活動エリアを広げていることもあり、なにか芸術家として一回りスケールが大きくなった感がある。実際、演奏のクオリティは高かった。本日のチャイコフスキーはマエストロ沼尻の意向も反映しているのか、全体的に落ち着いたテンポ設定がとられ、第1楽章はゆったりとした流れのなかで、テヌートを効かせた第2主題などフルボディの赤ワインのような味わいを醸し出す(楽器は1732年製のグァルネリ・デル・ジェス「カストン」)。展開部後半でのカデンツァも余裕をもって臨み、超絶技巧の誇示以上に音楽的な意味で聴かせどころとなっていた。美音を駆使した第2楽章カンツォネッタでは感傷に耽溺(たんでき)することなく品格ある表現を実現。オケの鮮やかな木管の彩りも出色。終曲では沼尻率いる読響(コンサートマスター:林裕介)もいっそう熱を帯び、三浦のソロとともにダイナミックな協奏=競争を展開した。
後半にはマエストロに付き添われ辻󠄀井伸行がステージに登場。ラフマニノフ2番は彼にとって外来オーケストラとも何度となく共演を重ねてきた自家薬籠中の一曲。今日もイン・テンポの設計のなかで自由に表情をつけていく辻󠄀井独自のスタイルを披露。第1楽章冒頭、ロシアの鐘の音を模した和音をぶれのないタッチで鳴らし切る。静かに緊迫感を増していくクレッシェンド、分厚い弦に埋もれることなく広がる豪壮なアルペジオは場内をラフマニノフの世界へと導いていく。展開部後半から再現部にかけての盛り上げも絶妙で、このあたりはオペラでも活躍するマエストロ沼尻の手腕も光る。第2楽章はピアノと木管が交わす室内楽的な会話が心に残る。白眉となった終楽章、ポリフォニックな箇所で辻󠄀井はベートーヴェンを弾くような明晰なタッチをもってクリア、ハ長調に転じたコーダでは壮大に鳴り響く副主題とシンクロしつつ圧倒的な力感をもって弾き終えた。当然ながら場内は興奮に包まれた。
アンコールには大河ドラマ「真田丸」のメインテーマ(服部隆之作)をソロ2人のデュオで披露し場内を沸かせた。
(城間 勉)
公演データ
辻󠄀井伸行×三浦文彰 究極の協奏曲コンサート Aプログラム
3月17日(火)19:00府中の森芸術劇場 どりーむホール
指揮:沼尻竜典
ピアノ:辻󠄀井伸行
ヴァイオリン:三浦文彰
管弦楽:読売日本交響楽団
コンサートマスター:林 裕介
プログラム
チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲ニ長調Op.35
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番ハ短調Op.18
アンコール
服部隆之:「真田丸」メインテーマ
他日公演
3月21日(土)15:00グランシップ 大ホール・海(静岡)
※Bプログラムの日程、曲目、出演者等の詳細は下記公式サイトをご参照ください。
https://avex.jp/classics/kyukyoku-concerto2026/
しろま・つとむ
音楽大学で音楽学を学ぶ。卒業後はクラシック専門音楽雑誌とクラシック情報誌の編集業務に携わり、2022年からフリーランスとして活動。とくに好きなジャンルは協奏曲、ピアノ曲、オペラなど(もちろんそれ以外のジャンルも聴きます)。B級グルメ探訪を趣味としている。イヌ科の動物を愛する。










