武満徹にギター・ソロ作品の世界を開いた荘村清志による意義深い公演
今年は、武満徹の没後30年。その作品は世界中で頻繁に演奏され、特にギター作品は、世界の奏者の必携のレパートリーとなっている。
その武満にギター・ソロ作品を委嘱したのが荘村清志で、その後も亡くなるまで交流を続け、死後初演された3曲からなる「森のなかで」は、各曲がジョン・ウィリアムス、ジュリアン・ブリームと荘村に献呈された。
今回のプログラムも「ギターのための12の歌」より9曲、〝エキノクス〟、〝フォリオス〟、〝森のなかで〟と荘村が初演した曲が並ぶ。
冒頭に置かれた最初の武満ギター・ソロ作品〝フォリオス〟を作るにあたって荘村が、ギター・ソロの名曲を武満の自宅で演奏、それに加えて様々なギター奏法や表現の可能性を模索して生まれた作品だが、そこには既存のギター曲の影響も感じられる。
その後「エキノクス」を経て、「森のなかで」に到達する過程で、ゆっくりしたテンポ、拍節感が薄く、響きが多層的に動いていく武満徹の音の世界に収斂されていき、一作ごとにギターの音の広がりが豊かになる進化を遂げてきたことが、ある意味で共作者ともいえる荘村の演奏から感じ取れたことはこの演奏会の大きな意義だろう。
そして、フォリオスが初演された1974年7月の演奏会のアンコールとして編曲された「オーバー・ザ・レインボー」をきっかけに、LPを作る目的で12曲が編曲された「ギターのための12の歌」から9曲が演奏された。「早春賦」からビートルズ、アイルランド民謡まで、まさしくジャンルの隔てなく音楽を楽しんだといわれる武満が口ずさんだと思われるメロディが、あらゆるジャンルで使われるギターの多彩な奏法を交えて、魅力的な作品となっている。
委嘱作「エキノクス」の譜面と共に武満から贈られた「荘村のおかげでギターという楽器との深い縁ができた、その感謝の印として、あなたにギフトとして差し上げます」ということばもトークで紹介されたが、武満徹の作曲家そして人間としての魅力が感じられた演奏会だった。
(平末 広)
公演データ
東京・春・音楽祭2026
荘村清志(ギター)武満 徹没後30年に寄せて
3月15日(日)15:00東京文化会館 小ホール
ギター:荘村清志
プログラム
武満 徹:フォリオス
武満 徹 編曲
:「ギターのための12の歌」より
:オーバー・ザ・レインボー(H.アーレン)
:早春賦(中田 章)
:失われた恋(J.コスマ)
:星の世界(C.C.コンヴァース)
:ヘイ・ジュード(J.レノン=P.マッカートニー)
武満 徹
:すべては薄明のなかで――ギターのための4つの小品
:エキノクス
武満 徹 編曲
:「ギターのための12の歌」より
:シークレット・ラブ(S.フェイン)
:ミシェル(J.レノン=P.マッカートニー)
:イエスタデイ(J.レノン=P.マッカートニー)
:ロンドンデリーの歌(アイルランド民謡)
武満 徹
:森のなかで――ギターのための3つの小品
アンコール
武満 徹:死んだ男の残したものは(ギター独奏版)
ひらすえ・ひろし
音楽ジャーナリスト。神戸市生まれ。東芝EMIのクラシック担当、産経新聞社文化部記者、「モーストリー・クラシック」副編集長を経て、現在、滋賀県立びわ湖ホール・広報部。EMI、フジサンケイグループを通じて、サイモン=ラトルに関わる。キリル・ぺトレンコの日本の媒体での最初のインタビューをしたことが、ささやかな自慢。










