信末のソロが圧巻! 豪快かつ爽快なシュトラウス演奏
日本フィルの第261回芸劇シリーズ。首席指揮者カーチュン・ウォンの指揮で、芥川也寸志の「交響管絃楽のための音楽」、R.シュトラウスのホルン協奏曲第1番(独奏:信末碩才)、ストラヴィンスキーのバレエ組曲「火の鳥」(1945年版)が披露された。
ウォンの指揮はとにかく明確。あらゆる動きを生き生きと浮き彫りにする〝きっぷのいい〟音楽作りが終始なされていく。
この方向性は、まず芥川作品の第1楽章で効力を発揮。種々の細かな動きが明瞭に奏されることで、曖昧模糊となりがちな同楽章の妙味が明快に伝えられた。
R.シュトラウスは、同楽団の首席ホルン奏者・信末のソロが圧巻の一語。冒頭から豊麗でハリのある音による雄大な吹奏が会場を満たし、第2楽章の息の長い歌や、随所の速い動きも極めて鮮やかに奏される。これはウォンの表現明確なバックとも合致した豪快かつ爽快なシュトラウス演奏。筆者は信末が在京オーケストラのホルン奏者ではナンバー1とみているが、今回はそれを見事に実証する形となった。シュトラウス作品の断片が登場する森亮平の「Nach Richard」もセンス抜群の無伴奏アンコール。
後半の「火の鳥」は、お馴染みの1919年版に比べて精緻な場面が多い1945年版の内容が、前記のウォンの特性に即しているため、「凶悪な踊り」に至るまで(特に同版ならではの「パントマイム1」〜「パントマイム3」)の細やかな部分が存分に精彩を放つ。フルートをはじめとする各パートのソロも秀逸で、同版の魅力がこれまた明快・爽快に示された。
ちなみに、芥川作品の第2楽章や「火の鳥」の後半等、迫力ある部分のダイナミクスにも不足はなく、欲求不満やストレスをまるで感じさせないオーケストラ・コンサートとなった。
(柴田克彦)
公演データ
日本フィルハーモニー交響楽団 第261回芸劇シリーズ
3月8日 (日) 14:00東京芸術劇場 コンサートホール
指揮:カーチュン・ウォン
ホルン:信末碩才
管弦楽:日本フィルハーモニー交響楽団
コンサートマスター:田野倉雅秋
プログラム
芥川也寸志:交響管絃楽のための音楽
R.シュトラウス:ホルン協奏曲第1番 変ホ長調 Op.11 TrV.117
ストラヴィンスキー:バレエ組曲「火の鳥」(1945年版)
ソリスト・アンコール
森亮平:Nach Richard〜リヒャルトの後に〜
しばた・かつひこ
音楽マネジメント勤務を経て、フリーの音楽ライター、評論家、編集者となる。「ぶらあぼ」「ぴあクラシック」「音楽の友」「モーストリー・クラシック」等の雑誌、「毎日新聞クラシックナビ」等のWeb媒体、公演プログラム、CDブックレットへの寄稿、プログラムや冊子の編集、講演や講座など、クラシック音楽をフィールドに幅広く活動。アーティストへのインタビューも多数行っている。著書に「山本直純と小澤征爾」(朝日新書)。










