反田恭平 念願のフルサイズ編成のJNOを弾き振りして情熱的で起伏に富んだ演奏を披露した
反田恭平&ジャパン・ナショナル・オーケストラ(JNO)の冬ツアー2026の4公演目にあたる2月6日のサントリーホールでのコンサートを聴いた。
2018年に「MLMダブル・カルテット」として発足し、2021年に「ジャパン・ナショナル・オーケストラ」となった後も室内オーケストラの規模で活動を続けてきたJNOにとって、今回は念願のフル・サイズ(第1ヴァイオリンが14名)でのツアーである(2023年にブラームスの交響曲第1番の演奏会はあったが、ツアーとしては初めて)。コアメンバーに加えて、数多くの客演奏者を招いて、メインにチャイコフスキーの交響曲第4番が取り上げられた。
演奏会前半は、反田恭平の弾き振りで、ショパンのピアノ協奏曲第2番。この曲は弦楽器が12型(第1ヴァイオリンが12名)で演奏された。冒頭、反田が立ち上がって指揮。ヴァイオリンの音程がぴったりと合い、一体感がある。中低弦楽器もしっかりと鳴る。独奏ピアノは、十分に重みのある濃密な音を奏でる。そして、独奏ピアノとオーケストラが室内楽のようなコミュニケーション。コンサートマスターの岡本誠司のリードが素晴らしい。第2楽章の反田の独奏が洗練の極み。オーケストラの最弱音での伴奏も集中力がある。ファゴット(皆神陽太)のソロが見事。第3楽章では独奏ピアノの音が粒立ち良く、華麗に舞う。ソロ・アンコールのマズルカ ハ長調 作品56-2も多彩。
そして、後半は、チャイコフスキーの交響曲第4番が14型で演奏された。まず、最後列の奏者まで熱演する弦楽器の音の厚みに圧倒された。反田は、指揮棒を持たないで、腕や身体全体を使って指揮。情熱的であり、音楽に起伏をもたらす。とりわけ第1楽章展開部後半は、指揮者とオーケストラの集中力でまさに凄絶(せいぜつ)な表現。第2楽章では憂愁が濃淡をつけて描かれた。オーボエ(荒木奏美)とファゴット(古谷拳一)のソロが魅力的。第4楽章は、凄(すさ)まじい熱量で、オーケストラの鳴りが素晴らしい。そして情感も十分に表現される。アンコールの「白鳥の湖」の「チャールダーシュ」も起伏の大きな演奏。
今回のJNOは、コアメンバーだけでなく、客演の奏者も含めて、ソリスト、国内外のオーケストラの主力奏者らが集い、まさに若い世代のオール・スター・オーケストラという感じであった。反田が熱望していたJNOでのロシアのシンフォニーの演奏。同世代の仲間たちと一体となってかなりの高い水準で実現できたといえるだろう。
(山田 治生)
公演データ
反田恭平&ジャパン・ナショナル・オーケストラ コンサート冬ツアー2026
2月6日(金)19:00サントリーホール大ホール
指揮&ピアノ:反田 恭平
管弦楽:ジャパン・ナショナル・オーケストラ
コンサートマスター:岡本 誠司
プログラム
ショパン:ピアノ協奏曲第2番ヘ短調Op. 21
チャイコフスキー:交響曲第4番ヘ短調Op. 36
アンコール
ショパン:マズルカ第2番ハ長調Op.56(ピアノ)
チャイコフスキー:白鳥の湖(組曲版)Op. 20aより「チャールダーシュ(ハンガリーの踊り)」
やまだ・はるお
音楽評論家。1964年、京都市生まれ。87年、慶応義塾大学経済学部卒業。90年から音楽に関する執筆を行っている。著書に、小澤征爾の評伝である「音楽の旅人」「トスカニーニ」「いまどきのクラシック音楽の愉しみ方」、編著書に「オペラガイド130選」「戦後のオペラ」「バロック・オペラ」などがある。










