平井美羽(ヴァイオリン)、有冨萌々子(ヴィオラ)若き才能きらめくモーツァルトと和田一樹指揮による慟哭の「悲愴」
なかのZEROホールで開催された和田一樹指揮、新日本フィルによる名曲コンサート。当サイトで「ヴィオラ奏者 有冨萌々子のオーストリア便り」(ヴィオラ奏者 有冨萌々子のオーストリア便り | CLASSICNAVI)を連載していた有冨がソリストを務めるとあって取材に出かけたのだが、若い2人のソロはもちろんのこと、公演全体を通して期待以上に聴き応えある演奏が披露された。
お目当てのモーツァルトのヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲はウィーン・フィル アカデミーの修了生で、現在もオーストリアなどで活躍を続ける有冨と国内の各コンクールで上位入賞を重ね、東京芸大大学院で研さんを積んでいる若手ヴァイオリニストの平井美羽がソリストを務めた。2人とも弓をタップリと使い、伸びやかなソロで聴衆を魅了。平井はよく通る高音が魅力的。旋律やフレーズの処理がしなやかで、才能の片鱗(へんりん)を窺わせた。一方の有冨はさすがウィーン・フィルやウィーン国立歌劇場などで実際に演奏経験を重ねてきただけあって、豊かな鳴りと確固たる拍動を感じさせるなど、独墺圏で活躍するアーティストならではの安定感にあふれた演奏を聴かせてくれた。さらに2人とも能動的に弾き進めていたが、両者の呼吸と音程がぴったり合っていたことも特筆しておきたい。(大物音楽家同士の場合、両者の呼吸が明らかに合わず、共演ではなく競演になってしまった例も多々あった)
喝采に応えてノルウェーの作曲家ヨハン・ハルヴォルセンのヴァイオリンとヴィオラのためのパッサカリアをアンコールし、ヴィルトゥオーゾぶりもアピールした。
後半はチャイコフスキーの交響曲第6番。和田一樹という指揮者、初めて聴いたのだが、なかなか面白いマエストロである。作品の造形構築よりも曲想の変化をドラスティックなまでに表出させることに重きを置いたアプローチ。全楽章を通してインテンポで演奏を進めることはなく、テンポを激しく揺らし、ダイナミックレンジも大きく取ってドラマティックに表情を付けていく。
圧巻は第4楽章。ひとつひとつの旋律を深く掘り下げるように歌い込ませることで、徐々に濃厚なうねりを創り出していく。そこから受ける印象は〝悲愴〟というよりは激しい〝慟哭(どうこく)〟であった。新日本フィルもコンサートマスターの伝田正秀が時折、中腰になってオケをリードするほどの熱演で応えた。オケ・メンバーを本気にさせる力も指揮者には重要な要素である。この日の演奏を聴く限りにおいては、和田にそうした力が備わっているように映った。今後を注目していきたい。
(宮嶋 極)
公演データ
フレッシュ名曲コンサート 新日本フィルハーモニー交響楽団 愛と哀しみの作曲家 チャイコフスキーとモーツァルト
2月6日(金)19:00 なかのZERO大ホール
指揮:和田一樹
ヴァイオリン::平井美羽
ヴィオラ:有冨萌々子
管弦楽:新日本フィルハーモニー交響楽団
コンサートマスター:伝田 正秀
プログラム
モーツァルト:歌劇「フィガロの結婚」序曲
モーツァルト:ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲 変ホ長調 K. 364
チャイコフスキー:交響曲第6番ロ短調Op.74「悲愴」
アンコール
ヨハン・ハルヴォルセン:ヴァイオリンとヴィオラのためのパッサカリア(ソリスト)
みやじま・きわみ
放送番組・映像制作会社である毎日映画社に勤務する傍ら音楽ジャーナリストとしても活動。オーケストラ、ドイツ・オペラの分野を重点に取材を展開。中でもワーグナー作品上演の総本山といわれるドイツ・バイロイト音楽祭には2000年代以降、ほぼ毎年訪れるなどして公演のみならずバックステージの情報収集にも力を入れている。










