小編成オーケストラの響きを満喫させる意欲作に注目

 小ぶりなサイズのオーケストラを生かして、その顔合わせならではの魅力をたっぷりと伝える新譜がそろった。

<BEST1>

鈴木秀美&オーケストラ・リベラ・クラシカ ハイドン:交響曲第104番「ロンドン」ほか

鈴木秀美(指揮)/バルトルド・クイケン(フルート)/オーケストラ・リベラ・クラシカ
ハイドン:交響曲第4番ニ長調、第104番ニ長調「ロンドン」/モーツァルト:フルート協奏曲第1番ト長調/J・C・バッハ:フルート協奏曲ニ長調
アルテ・デラルコ ADJ068

アルテ・デラルコ ADJ068
アルテ・デラルコ ADJ068

<BEST2>

カプソン&ローザンヌ室内管 ヴィヴァルディ:協奏曲集「四季」ほか

ルノー・カプソン(ヴァイオリン&指揮)/ローザンヌ室内管弦楽団
ヴィヴァルディ:協奏曲集「四季」/サン=ジョルジュ:ヴァイオリン協奏曲ト長調、同ハ長調
ワーナー(輸入盤) 5419.718972

ヴィヴァルディ
ワーナー(輸入盤) 5419.718972

<BEST3>

マナコルダ&カンマーアカデミー・ポツダム ベートーヴェン交響曲全集1

アントネッロ・マナコルダ指揮/カンマーアカデミー・ポツダム
ベートーヴェン交響曲第1番ハ長調、第2番ニ長調、第7番イ長調
ソニー・ミュージック SICC-30701〜2

カンマーアカデミー・ポツダム
ソニー・ミュージック SICC-30701〜2

コメント

バロック・チェロの名手として高名な鈴木秀美が2001年に旗揚げした、オリジナル楽器による日本の団体、オーケストラ・リベラ・クラシカが、定期公演を始めて20年たった。ハイドンの交響曲をレパートリーの核に据え、モーツァルトやベートーヴェンなど古典派の作品へ集中的に取り組む戦略は、きわめて意欲的で、オリジナル楽器でしか出せない繊細な音色と響きを、日本の聴衆に届け続けた功績はとても大きい。

 

 そんな節目を祝う格好で、自主レーベルから、2019年11月に行なわれた定期演奏会のライブ録音が発売された。ハイドン最初期の第4番に、最後の「ロンドン」と二つの交響曲を並べ、モーツァルトなどのフルート協奏曲では、盟友でもあるベテラン、バルトルド・クイケンが独奏を務める豪華さだ。作曲家の語法と様式をしっかり体現し、よく練られた明朗なアンサンブルに、20年という年月の積み重ねを実感する。

 

 フランスのヴァイオリニスト、ルノー・カプソンは、すっかり現在の同国を代表する奏者として知られるようになった。レパートリーの広さは驚異的で、バロックから現代のポピュラーまでこなす技量とセンスが光る。そこへ新たに加わったのが、おなじみヴィヴァルディの「四季」だ。2021年から芸術監督に就いたローザンヌ室内管弦楽団を率いて、さっそうとしたスピード感あふれるソロを聞かせ、現代感覚を鋭敏に反映したスタイルにまとめ上げた。

 

 ヨーロッパで評判の指揮者アントネッロ・マナコルダが、ようやく日本にも本格登場する。手兵の楽団、カンマーアカデミー・ポツダムとのベートーヴェン交響曲録音は国内盤がリリースされ、活気に富んだ軽妙な快演に引きつけられる。続編が楽しみだ。来春には在京のフル・オーケストラへの客演も予定され、一気に注目が高まりそうだ。

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深瀬 満

ふかせ・みちる

音楽ジャーナリスト。早大卒。一般紙の音楽担当記者を経て、広く書き手として活動。音楽界やアーティストの動向を追いかける。専門誌やウェブ・メディア、CDのライナーノート等に寄稿。ディスク評やオーディオ評論も手がける。

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