vol.1 仁宮花歌
CHOPIN : Introduction et rondo in E-flat Major Op.16
今後活躍が期待される若手音楽家を取り上げる動画企画が始まりました。
音楽大学や高校に通う学生や若手の音楽家に焦点を当て、インタビューやレッスン風景の取材、演奏も披露してもらいます。
記念すべき第1回目は、2022年に、第21回東京音楽大学コンクールのピアノ部門で大学生を抑えて、東京音楽大学付属高等学校2年(当時)で第1位を獲得した仁宮花歌さんを特集。
日々の練習で心がけているところ、今後の目標、そして仁宮さんが目指すピアニスト像について語ってもらいました。
ピアニスト 仁宮花歌さんが語る音楽との出会い
Interview : 仁宮花歌
── 音楽との出会いは?
幼稚園の頃にお友達の家に電子ピアノがあって、お友達をほったらかしにして電子ピアノで遊んでいたのが出会いです。
── その時に弾いた曲は憶えていますか?
全然ピアノを習ってなかったので、曲は弾けなくて遊びで適当にピアノを弾いていました。お母さんに1年くらいピアノを買って欲しいとねだって、ピアノを買うから習うということで6歳から習い始めました。それがきっかけです。
── ほかの楽器には興味はなかった?
他の楽器は興味なかったそうで、なぜかピアノにだけ夢中です。
── 先ほどショパンの「ロンド(序奏とロンド) 変ホ長調 Op.16」を演奏してもらったが、その曲に対してどんな印象を持っていますか?
サロン風なおしゃれな感じで弾こうと思っています。
── 曲の解釈はどうやって深めていますか?
今頑張って学んでいる最中で・・・頑張ります!(笑)
── 仁宮さんは手が小さいんですか?
身長も小さいし、手も小さくて、だけどフォルテとかいろんな音を出すために色んな身体の使い方をしています。
── 身体が小さいということで、その中で苦労されていることや、小さいながらもうまく弾くコツはありますか?
大きい手の人よりもフォルテとか出すのが難しいのですが、ただ音を出すのではなくて自分の求める音をうまく表現できたらいいなと思っています。自分に合う選曲も大事かなと思っています。
── 仁宮さんが演奏する時に意識していること、例えば演奏前のルーティーンはありますか?
基本的には本番は楽しんで弾こうと思って臨んでいて、本番前のルーティーンは屈伸とかスクワットとか身体を芯から温めて準備万端にして本番に臨んでいます。手だけじゃなくて身体が熱くなるような今から走るような準備体操を舞台裏でやっています。
── 緊張もほぐれますか?
呼吸も整うし、心がほぐれます。
── 楽しく弾くことは大切なことですか?
楽しい曲じゃないときもありますが、音楽を楽しむことを心掛けています。
── ズバリお聞ききしますが、仁宮さんにとって音楽やピアノはどういう存在?
私にとってはオモチャというか、色々なことを想像して音を楽しむものです。そんな存在です。
── 今後の目標は?
今は大学受験に向けて頑張ります。アカデミックに頑張るように知識を身に着けたい。音楽の歴史的背景とか作曲家がその時何をしていたかなど、音楽への理解を深めたいです。
── 将来、どんな音楽家になりたいですか?
その瞬間を聴衆の人たちと共有して音楽を楽しみたいです。
Interview : 石井理恵
── 仁宮花歌さんといつ出会いましたか?
彼女が1年生の終わり頃に東京音楽大学付属音楽教室の入室試験を受け、入室したのがきっかけで、小学校2年生の春から私が担当することになりました。
── 小学校2年生からずっとレッスンされているのですか?
そうですね。レッスンするようになって10年以上になったのかなと思います。
── 出会った頃の仁宮さんの印象は?
すごく音楽が大好きで、ピアノが大好きで、心から楽しそうにピアノを弾く子だなと思いました。お話するよりもピアノの方が表情豊かというか、そういう印象です(笑)
── 昔から上手な子でしたか?
彼女はピアノを始めたのが小学校に上がるぐらいのタイミングで、すごくわりに遅めでした。1年経つか経たないかの状態で東京音楽大学付属音楽教室に移ってきました。うちに入る前に習っていた先生が、その1年のレッスンの中で彼女の音楽的な才能というか、すごく感受性が強くて歌心がすごくある部分を見抜いていたとか。小さい、いわゆる簡単な曲でもそれが伝わる演奏だったと、最初から感じていたそうです。
── いわゆる光るものというか、この子はいいと思ったのは いつぐらいでしょうか?
多分、最初の時に、何か持っている子だなっていうのは感じました。彼女の入室をする時のピアノ実技試験を私は聴いていないのですけれども、聴いていた先生方からも「何かちょっといいものを持っている子なのよ」という触れ込みもあって、やはり聴いてみたら何か光るものを感じていました。
── 仁宮さんのピアノで魅力的なところは?
すごく自然に、多分何も考えなくても出てくる心地よい「歌」を、彼女の演奏を聴いていると感じますし、自分の中でイメージした音をすごく強く感じられるというのが彼女の魅力です。
── ご自身でイメージした音をだすっていうのは、それは難しいものなのでしょうか?
そうですね。いわゆる音楽を持ってる持ってないっていうワードがありますが、音楽を感じているか感じていないのかというのをピアノとして表現できる能力っていうのは教えてできることだけではなくて、天性の才能である部分があると思います。それは彼女が持っているとても大きな才能だと思います。
── 普段のレッスンの時の仁宮さんと、コンクールや演奏会の時の仁宮さんの違いは?
普段の花歌ちゃんは、穏やかでガツガツと競争に勝ってやろうみたいなタイプではなくて、普段から音楽がすごく好きで楽しんでいるのが、とてもよく分かります。本番の舞台では、ニコニコと出てきて、すごく楽しそうに見えますが、実は結構緊張もしているようです。
でも、舞台で弾いている姿はちょっとハイというか、自分の音楽の世界に入っているのがわかりますね。普通に緊張はしていると思うのですけど、緊張していても何か自分の力を発揮できる能力があると思います。
── 先ほど仁宮さんにもお話を伺って、ご自身で演奏する時は楽しく演奏するっていうのを心掛けているとお話されていましたが?
本当にそうだと思います。とにかく何かピアノを弾いていて楽しそうっていうのが前面に出てきているのではないかなと思います。
── 今後、仁宮さんに先生が期待されていることは?
音楽的な才能が非常に豊かな方なので、どんどん日本だけでなく世界の方にも羽ばたいていけるぐらいの力があると思っていますし、ぜひ羽ばたいてほしいなと思っています。
Profile
仁宮 花歌 Hanaka NIMIYA
東京都出身。第72回全日本学生音楽コンクール中学生の部全国大会第2位。第21回日本演奏家コンクール中学生の部第1位、神奈川県教育委員会教育長賞。第1回ラフマニノフ国際ピアノコンクールJAPAN E部門第2位、ラフマニノフ賞。Danubia Talents第2回リスト国際ピアノコンクール(イタリア)Bカテゴリーabsolute 1位。パデレフスキ記念国際ピアノコンクール(ポーランド)C2カテゴリー グランプリ。第45回ピティナ・ピアノコンペティション全国決勝大会Jr.G級ベスト賞。第6回ベートーヴェン国際ピアノコンクールアジア第1位、若林暢賞、横浜シンフォニエッタ賞、相模湖交流センター賞受賞。第4回ノアン フェスティバル ショパン イン ジャパン ピアノコンクール A1部門第1位、ノアン賞受賞。第21回東京音楽大学コンクールにおいて史上最年少で第1位。第11期福田靖子賞奨学生。 高校2年生時に、東京音楽大学 表参道サロンコンサートとして、初リサイタルを開催。 東京音楽大学付属高等学校ピアノ演奏家コース3年に特待生として在学中。石井克典、石井理恵の各氏に師事。
石井 理恵 Rie ISHII
山形県出身。東京音楽大学ピアノ演奏家コースを経て同大学大学院器楽専攻鍵盤楽器研究領域修了。 国際ピアノ音楽祭(NY)に参加。ドロシー・マッケンジーコンペティション第3位。 第 75 回日本音楽コンクール入選、及び岩谷賞(聴衆賞)。他数多くのコンクールで入賞を果たす。 これまでに山形交響楽団、仙台フィルハーモニー管弦楽団、東京交響楽団と共演。 2012年カプースチン作曲のピアノ協奏曲、 2 台のピアノと打楽器による協奏曲を日本初演し好評を博す。 アンサンブルピアニストとしても国内外で幅広く活動している。 復興支援のための演奏活動、教育現場でのアウトリーチ活動なども積極的に行っている。 現在東京音楽大学専任講師を務め、後進の指導にも力を注いでいる。