渾身の感動的名演! N響が没入感抜群のパフォーマンスを披露
「N響100年記念 特別演奏会 マーラー〝復活〟」の初日。首席指揮者ファビオ・ルイージのもとで、マーラーの交響曲第2番「復活」が披露された。
印象をひと言で言うと「渾身(こんしん)の感動的名演」。全体の特徴としては、アゴーギクを頻繁に効かせた自在の進行と細部のこまやかで丁寧な造作、そしてますます若返ったN響メンバーの全身を使った没入感抜群のパフォーマンスが挙げられる。
コンサートマスターは郷古廉だが、隣にもう一人の第1コンサートマスター・長原幸太が位置する磐石の態勢。彼らやヴィオラの佐々木亮、チェロの辻󠄀本玲をはじめとする弦楽陣の最前列の奏者たちがとりわけ高い集中力を発揮し、身体を揺らして音楽を奏でる。かようなN響の姿は近年の特長でもあるが、今回は特にそれが際立った。
第1楽章冒頭のトレモロから気合十分。続く低弦の主題も然りで、しかもいつになく揃(そろ)っている。こうした縦線の合った精度の高いアンサンブルは全曲を通して続いていった。
ルイージはテンポを頻繁に変える。だがアクセルとブレーキの踏み加減が絶妙で不自然さはまるで感じさせず、皆が即応する様はN響の面目躍如の趣。第2楽章はえらく速いテンポで進み、より一層アゴーギクが多用される。その伸縮度合いの激しさと、それでいて巧みなフレージングはこれまで耳にしたことがないほどだ。
同楽章の後で声楽ソリスト2名が入場する。第3楽章以下も同様の方向で進む中、特筆されるのはソリスト二人(ソプラノ:イン・ファン、メゾ・ソプラノ:タマラ・マムフォード)の歌唱。後者の第4楽章の発音明瞭なソロも光ったし、とかく存在感の薄い第5楽章のソプラノがクリーミーかつ伸びのある声で普段以上の効果を発揮した。
その第5楽章は緻密で引き締まった構成による強靭(きょうじん)極まりない表現。(本日全体にそうだったが)ホルンの福川伸陽、トロンボーンの新田幹男をはじめとする管楽器陣のソロが素晴らしく、バンダの面々もほぼ完璧な演奏を展開。大人数(120人)の新国立劇場合唱団も、最初から起立して表情豊かでメリハリの効いた歌声を響かせ、最後は音響的にも音楽的にも高揚感満点の圧倒的大団円が形成された。
これは当コンビのマーラー演奏の中でも出色の出来栄え。N響の底力を改めて実感させられる公演となった。
(柴田克彦)
公演データ
N響100年記念 特別演奏会 マーラー「復活」
10月3日(土)18:00 NHKホール
指揮:ファビオ・ルイージ
ソプラノ:イン・ファン
メゾ・ソプラノ:タマラ・マムフォード
合唱:新国立劇場合唱団
合唱指揮:冨平恭平
管弦楽:NHK交響楽団
コンサートマスター:郷古廉、長原幸太
プログラム
マーラー:交響曲 第2番 ハ短調「復活」
他日公演
10月4日(日)14:00 NHKホール
しばた・かつひこ
音楽マネジメント勤務を経て、フリーの音楽ライター、評論家、編集者となる。「ぶらあぼ」「ぴあクラシック」「音楽の友」「モーストリー・クラシック」等の雑誌、「毎日新聞クラシックナビ」等のWeb媒体、公演プログラム、CDブックレットへの寄稿、プログラムや冊子の編集、講演や講座など、クラシック音楽をフィールドに幅広く活動。アーティストへのインタビューも多数行っている。著書に「山本直純と小澤征爾」(朝日新書)。










