子どもに音楽を 創立20周年記念コンサート

子どもたちと、本物の音楽とが出会う演奏会が実現

この7月に創立20周年を迎えた「NPO法人 子どもに音楽を」。全国の公立小・中学校を中心に、子どもたちへ無料でクラシック音楽の本格的な演奏を届けてきた。20年間で約500校、約7万人の児童・生徒が生の音楽に触れている。今回は、その活動に目黒区内で協力してきたアーティストたちが集結しての記念コンサート。錚々(そうそう)たる顔ぶれと、芸術性の高い室内楽作品が並んだ(9月12日、めぐろパーシモンホール)。

創立20周年を迎えた「NPO法人 子どもに音楽を」が、記念コンサートを開催
創立20周年を迎えた「NPO法人 子どもに音楽を」が、記念コンサートを開催

「柔らかな感性を持つ子どもたちにこそ、クラシック音楽との出会いの場を提供したい」という願いから始まった活動は、第一線で活躍する演奏家と子どもたちを結んできた。その歩みを祝うこの一夜は、活動の理念を大人の聴衆にも改めて示す機会となった。

幕開けは、エマニュエル・リモルディと沼沢淑音による2台ピアノ。ラフマニノフの組曲第1番「幻想的絵画」では、息の合ったアンサンブルから豊かな詩情があふれた。とりわけ、繊細なアルペジオの中から美しい歌が浮かび上がる第2楽章「夜と愛」の濃密なロマンティシズムが印象的だった。

続くシューマンのピアノ四重奏曲では、郷古廉、佐々木亮、佐藤晴真の弦楽器奏者3人に加藤洋之が加わった。4人による情感の冴(さ)えた演奏は見事。詩情と憧れに満ちた第3楽章、対位法的に闊達(かったつ)な終楽章では、4人の調和と対立の妙が際立ち、室内楽の醍醐味(だいごみ)を伝えて、前半の白眉となった。

後半は、川久保賜紀、松田理奈、南紫音、周防亮介による4つのヴァイオリンで、編曲による「オペラアリアメドレー」でスタート。オペラ「カルメン」「トスカ」「ボエーム」など名作の旋律が次々と現れ、各人の音色が浮き彫りになるアンサンブルが楽しく、ステージが華やいだ。続く近代ポーランドの女性作曲家、バツェヴィチ「4本のヴァイオリンのための四重奏曲」は初めて聴いたが、同郷のシマノフスキとはまた異なる、民族性とモダニズムの融合が興味深い逸品。

最後は、日本のクラシック界の重鎮3人、加藤知子、山崎伸子、伊藤恵によるメンデルスゾーンのピアノ三重奏曲第1番。最初から最後まで緊張感のある凛(りん)とした音楽づくりで、3人の音楽性がぶつかり合う。とりわけ第1楽章のスケールの大きなアンサンブルは圧巻だった。会場には多くの児童の姿があり、熱心に聴き入っていたのも印象に残る。本格的な音楽を子どもたちに届けたい――その願いを、演奏そのものが鮮やかに体現したコンサートだった。
(城間 勉)

クラシック界をけん引する演奏者たちが、子どもたちに本格的なクラシック音楽を届けた
クラシック界をけん引する演奏者たちが、子どもたちに本格的なクラシック音楽を届けた

公演データ

子どもに音楽を 創立20周年記念コンサート

9月12日(土)15:00めぐろパーシモンホール 大ホール

ピアノ:エマニュエル・リモルディ、伊藤 恵、沼沢 淑音、加藤 洋之
ヴァイオリン:郷古 廉、川久保 賜紀、南 紫音、加藤 知子、松田 理奈、周防 亮介
ヴィオラ:佐々木 亮
チェロ:佐藤 晴真、山崎 伸子

プログラム
ラフマニノフ:2台のピアノのための組曲第1番「幻想的絵画」Op.5
※リモルディ、沼沢

シューマン:ピアノ四重奏曲 変ホ長調Op.47
※郷古、佐々木、佐藤、加藤(洋之)

オペラ・アリア メドレー(小林 幸太郎編)
バツェヴィチ:4本のヴァイオリンのための四重奏曲
※川久保、松田、南、周防

メンデルスゾーン:ピアノ三重奏曲 第1番 ニ短調Op.49
※加藤(知子)、山崎、伊藤

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城間 勉

しろま・つとむ

音楽大学で音楽学を学ぶ。卒業後はクラシック専門音楽雑誌とクラシック情報誌の編集業務に携わり、2022年からフリーランスとして活動。とくに好きなジャンルは協奏曲、ピアノ曲、オペラなど(もちろんそれ以外のジャンルも聴きます)。B級グルメ探訪を趣味としている。イヌ科の動物を愛する。

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