ブラームスの多様な魅力が示された充実のオール・ブラームス・プログラム
現在、反田恭平率いるジャパン・ナショナル・オーケストラ(JNO)が創立5周年を記念する夏ツアーを行っている。その5公演目にあたるサントリーホールでの公演を聴いた。オール・ブラームス・プログラム。弦楽器は12型(第1ヴァイオリンが12名)で、ヴァイオリン群は対向配置が採られた。
ピアノ協奏曲第1番は、反田恭平の弾き振り。ピアノは蓋を取られ、オーケストラの中央に配された。第1楽章冒頭、オーケストラだけの導入で、反田は、立ち上がり、気合いの入った指揮を披露。音楽に推進力がある。そして、ピアノ独奏が入る。管弦楽の導入とは対照的に、反田のソロは、落ち着いていて、よくコントロールされている。ピアノの蓋を取っての演奏だけにボリューム感はそんなにないが、それを逆手にとるように、オーケストラとの室内楽的なコミュニケーションが図られた。12型のオーケストラも重々しくはならず、ちょうど良いバランスである。第2楽章も、反田の独奏は、澄んだ美音で、弱音表現が際立つ。弾き振りの醍醐味というべき、独奏ピアノと管楽器との直接のコミュニケーションが聴けた。第3楽章は、快活なテンポで、躍動的。まだ20代前半であったブラームスの情熱が今の若い音楽家たちによって再現されていた。全体を通して、コンサートマスター岡本誠司のリードが素晴らしい。ソロ・アンコールの「11のコラール前奏曲」から第8番でクール・ダウン。最近、反田が好んで弾く小品である。
後半は交響曲第2番。第1楽章からきわめて丁寧な演奏。耽美的とさえいえる美しさである。弱音を大切に扱い、ヴィブラートもかけすぎない。木管陣が魅力的で、ホルン(庄司雄大)も見事なソロを披露。第2楽章は、チェロを中心にたっぷりと歌われた、濃密なアダージョ。第3楽章は、オーボエ(荒木奏美)のチャーミングなソロとともに、軽く優しく演奏された。まるで子守歌のよう。第4楽章ではオーケストラの若々しさが弾ける。ダイナミックスの幅が広く、弱音は丁寧に奏でられる。最後は明るく楽しく開放的に締め括られた。全体を通して、ブラームスの多様な魅力が示されていた。それには、近年の反田のピアノでのブラームス演奏の経験が活かされていたといえるだろう。
オーケストラでのアンコールは、JNOメンバーの石原悠企の編曲による、ブラームスの「間奏曲」Op.118-2。
(山田治生)
公演データ
反田恭平&ジャパン・ナショナル・オーケストラ 夏ツアー2026
9月10日(木)19:00サントリーホール 大ホール
指揮&ピアノ:反田恭平
管弦楽:ジャパン・ナショナル・オーケストラ
コンサートマスター:岡本誠司
プログラム
ブラームス:ピアノ協奏曲 第1番 ニ短調 Op.15
ブラームス:交響曲 第2番 ニ長調 Op.73
ソリスト・アンコール
ブラームス:11のコラール前奏曲より第8番「一輪のばらが咲いて」
オーケストラ・アンコール
ブラームス(石原悠企編曲):間奏曲Op.118-2
他日公演
9月12日(土)15:00可児市文化創造センター 主劇場 宇宙のホール(岐阜)
9月14日(月)19:00和田山ジュピターホール(兵庫)
9月15日(火)18:45とりぎん文化会館 梨花ホール(鳥取)
9月17日(木)19:00オペラシティ コンサートホール(東京)
※プログラム等の詳細は、公式サイトをご参照ください。
https://www.jno.co.jp/ja/concert
やまだ・はるお
音楽評論家。1964年、京都市生まれ。87年、慶応義塾大学経済学部卒業。90年から音楽に関する執筆を行っている。著書に、小澤征爾の評伝である「音楽の旅人」「トスカニーニ」「いまどきのクラシック音楽の愉しみ方」、編著書に「オペラガイド130選」「戦後のオペラ」「バロック・オペラ」などがある。










